キャッチコピーは商品や企業をアピールするために重要な役割を果たします。読み手の印象に残したいと思っても、なかなかいいアイディアが浮かばないもの。しかし、キャッチコピーをつくるプロセスさえわかれば、一瞬で心をつかむキャッチコピーがつくれるようになります。そのプロセスを簡潔に解説する『キャッチコピーのつくり方』から、「はじめに」を紹介します。

忙しいあなたに 「キャッチコピー力」を身につけるための核心部分を

本書は、日々忙しくすごすビジネスパーソンのために、「コピーライティングの基本的な考え方」と「キャッチコピーをつくるプロセス」について、簡潔かつ核心部分だけを解説したものです。

根幹の部分に絞って語っているので、さまざまな分野に活用しやすいのも特徴です。

その守備範囲は、「広告」「販促」のキャッチコピーだけではありません。マーケティング戦略を立てるときの「コンセプトの立案」をはじめ、「企画書」「メール」「案内文」「WEBコンテンツ」「プレスリリース」など、さまざまなビジネス文章のタイトルや見出しにも活用できます。

このように「広告コピー」を書くだけでなく、広く「人の心をつかむ言葉を見つけ短く的確に表現する能力」のことを、「キャッチコピー力」と名付けました。

「キャッチコピー力」が役立つのは、ライティングの場面にとどまりません。

経営戦略、事業構築、商品開発など、経営の根幹に関わる「理念」「パーパス」「ビジョン」を生み出すこともできます。リーダシップや組織運営などにも、言葉は重要な役割を果たします。

言葉は、あらゆる企業活動の中心にあります。「キャッチコピー力」は、多くのビジネスパーソンにとって必要不可欠な能力なのです。

この造語をタイトルに入れた『キャッチコピー力の基本』という本を2010年に上梓しました。 おかげさまで発刊から 14年たった今でも版を重ねてロングセラーになっています。海外でも翻訳され、中国、台湾では日本以上のベストセラーになっています。

コピーライター志望者や専門職に向けてではなく、一般のビジネスパーソンに向けてコピーライティングのメソッドを伝えるというコンセプトは、当時としては斬新でした。同じコンセプトをもとに企画されたライティング講座は、もう12 年以上続いています。

ただし、少し反省もあります。『キャッチコピー力の基本』ではHOW(テクニック)に特化しすぎたということです。HOWを数多く知れば知るほど、活用できないことも多い。辞書的に使っていただく分にはいいのですが、あれもこれも覚えなきゃと思うと挫折 してしまいがちです。

今回、『キャッチコピー力の基本』と同じ編集者の川上聡さんと再びタッグを組むにあたり、「本当に必要十分の背骨の部分だけを書いた本にしよう」というコンセプトを定めました。 本当に重要な部分を語るのに文字数はいらない。背骨だけをきっちり理解して覚えることで、再現性が高くなり、その結果、身につくのです。

参考にしたのは『アイデアのつくり方』という古典的名著です。 序文や解説を除くとわずか50ページほどの本ですが、アイデアの発想法はこの1冊で十分という高い評価を得ています。 本書は「キャッチコピーにおける『アイデアのつくり方』」を目指しました。

しかし、その壁は想像以上に高かった。キャッチコピーを頭の中でどう考えてつくるのかということの言語化を試行錯誤し、何度も挫折しそうになり、企画から出版までに3年半かかりました。 目標が達成されたかどうかは、読者のみなさんの判断に委ねますが、ブックデザインはそのコンセプトを際立たせるため『アイデアのつくり方』へのオマージュとなっています。

『キャッチコピー力の基本』がHOWをこれでもかと入れ込んだ「エピソード1」だったとすると、本書は「キャッチコピー力を身につけるための考え方のプロセス」を、贅肉を極限まで削ぎ落として表現した「エピソード0」と言うべき1冊です。

本書で「キャッチコピーをつくるプロセスの背骨」を学んだのちに、HOWが書かれた本を参考にすると、真の「キャッチコピー力」が身につくことは間違いありません。

流し読みすれば30分もかからず読めるかもしれませんが、一生役立つ1冊になると確信しています。ぜひ、この本で、「一瞬で心をつかむ、一生役立つスキル」を身につけてください。


川上徹也(かわかみ てつや)
コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。特に企業や団体の「理念」や商品の「コンセプト」を1行に凝縮する「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られる。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポート、広告・広報アドバイザーなども務める。著書は『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(いずれも角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)、『高くてもバカ売れ!なんで?』(SB新書)など多数。海外にも6か国20冊以上が翻訳されており、台湾や中国などでベストセラーになっている。