1つのタスクは30分以内に
先延ばしグセがあって、困っています──これは、起業やビジネスの支援をしていて一番多い相談内容といってもいいかもしれません。
誰にでも、いつまでも終わらないタスクがあるでしょう。「今日やるぞ」と付箋に書いても、どうしても終わらない。「明日こそはやろう」と思っても、同じことが繰り返される。
この現象が起こる一番大きな理由は、そのタスクが「大きすぎる」ことです。その基準は、15分という人もいますが、まずは30分です。それより長く時間がかかるタスクは大きすぎます。
大きすぎるタスクは着手するまでの心理的な抵抗感が大きいですし、着手したとしてもなかなかその日のうちには終わりません。終わらなければ敗北感を抱くことになり、ますますそのタスクがイヤになります。
私もタスク1つは30分以内の大きさに分割することを心がけています。
千里の道も1歩から
例えば「本を書く」というタスクが典型的な「大きすぎる」タスクです。「よし、今日は本を書くぞ! 他には何もやらない!」と意気揚々と挑んだところで、結果は最初から見えています。夜になっても、その本が書き上がっていることはまずありません。
本を書くというのは、何日もかかるタスクです。書き始めたその日に書き終えるなどということは絶対にありません。つまり、「本を書く」という大きいタスクに取り組もうとした時点で、負けが決まっているんですね。
ではどうしたら良いか。
この場合だと、「本の目次を書く」「本の1章1項を書く」というように(これでも少し大きいかもしれませんが)、30分以内で終わる単位にタスクを分割していきましょう。
そうすると、「今日は本の目次を書くというタスクを完了した!」となって、その日が勝ちに変わります。
小さく分割したタスクをいくつも実施することにより、いずれ本は書き上がります。
いつ、どこまで終われば良いかと細かな〆切を設定していくのが大きなプロジェクトを完了させるコツです。
象を1頭食べる方法は、1口ずつ食べること。千里の道も1歩から。小さく分割したタスクを1つずつ、片付けていきましょう。
付箋とノートを活用して仕事を仕分けする
『残業ゼロのノート術/石川和男』では、全てのタスクに〆切を設定することが仕事をスピードアップする上で重要だと書かれています。
『3ステップ時間管理術/酒井秀介』では、タスクの処理時間を見積もり、付箋に書いておくことを推奨しています。例えば30分のタスクであれば、スケジュール上で30分の空き時間があればそこに付箋を貼り付けて、処理していくという考え方です。
私はこの本の「タスクをスケジュールする」という考え方に大賛成です。付箋に書かれて机に貼ってあるだけのタスクはいつまでもやらないかもしれませんが、それをスケジュール帳に貼り付けた瞬間に予定日時が決まり、実行しやすいからです。
その日1日のタスクを書き出した後にも、どのタスクを何時くらいに実行するかを決めておくと、実行の確率が大きく上がります。
夕方に回したタスクが、急なタスクが横入りしてきたために手をつけられないことがあります。午前中はそのようなことがなく、集中力も高いので、重要なタスクは午前中に設定し、片付けてしまいましょう。
『1日5分ミニノート仕事術/山崎城二』には、必ずミニノートに、
1.何をやるか(内容)
2.いつまでにやるか(期限)
3.どれだけやるか(レベル)
を記入するとあります。タスクリストを書き出し、今日終わらせる作業には「目標作業時間」を、明日以降に終わらせる作業には「期限」を記入するなど、オーソドックスなタスク管理に思えますが、「どれだけやるか(レベル)」を書くのは斬新ですね。
まずタスクをABCDにランク分けして、「改善業務」「新規業務」などの最重要なランクAが全体の2割以上になるように、「緊急事項」のBが多くなりすぎないように仕事のやり方を見直していくということです。「通常業務」がC、「やめるべき仕事」がDですね。
そして、その日できなかったタスクは消してしまわずに、翌日以降のタスクリストに移行してやり遂げるのです。Dの「やめるべき仕事」に分類して意思をもって消すのはすごくいいのですが、できなかったからやらない、ということを許さないということです。
私も、本当に大切なことは、いかに効率的にタスクを捌くかではなくて、いかにムダなことをやらないかだと考えています。
ムダなタスクなんてやっていないと思うかもしれませんが、目標から逆算すると、ムダなことに膨大な時間をかけているということはよくあります。常に棚卸しをして、やめるべき仕事をどんどん減らしていくことは重要なのです。
安田修(やすだ おさむ)
株式会社シナジーブレイン代表取締役。北海道大学経済学部卒、日本生命保険相互会社で15 年勤務後、起業。日本生命ではシステム構築、資産運用を担当。会員約2,200人のコミュニティ・プラットフォーム「信用の器フラスコ」代表。起業家であると同時に、起業支援とビジネス仕組化の専門家。フラスコノート会を主催、フラスコノート・コーチ資格を認定。オンラインサロン「フラスコノート・ラボ」「ダーウィン」など多数のコミュニティの立ち上げ、運営に関与。
ノートを駆使した学習により中小企業診断士・証券アナリストなど難関資格にも多数合格し、独立起業。起業後7 年間で書いたノートはビジネスアイディアだけで33 冊。一人合宿という独自の手法によりノートを活用してビジネスのアイディアや仕組みを考え続け、サラリーマン時代の所得を大きく超えつつ、潤沢な自由時間を確保。「誰もが自由で、好奇心あふれる生き方ができる世界を創る」がミッション。
著書に『書けば理想は実現できる 自分を変えるノート術』(明日香出版社)、『新しい副業のかたち』『新しい起業のかたち』(以上、MdN)などがある。