リモート会議やチャット、メール……オンラインでのコミュニケーションが一般的になったいま、必要とされるのは「短い時間で簡潔に伝えるスキル」。ダラダラと要領を得ない話をするのは、相手の時間を奪ってしまうことになり、ビジネスシーンにおいても最も避けたい行為のひとつです。

そこで『9割捨てて10倍伝わる要約力』(山口拓朗:著)から、最短・最速のコミュニケーションで仕事の成果を最大化させる「要約力の高い人」になるコツを紹介します。

※本稿は『9割捨てて10倍伝わる要約力』を再編集したものです。

まとまりのない話は相手をげんなりさせる

「要約力」が高い人は、情報を的確に把握できており、そのつど「何を」「どの程度」「どの順番」で話せばいいかがわかっています。話が脱線することは珍しく、仮に脱線しても、絶妙なタイミングで、きちんと話を元に戻すことができます。

即興のコミュニケーションにおいても、「要約力」が高い人と低い人では、その言葉のやりとりに明確な差が生じます。

「要約力」が低い人は、情報が整理できていないため、言葉が出てこなかったり、とりあえず頭に浮かんだことが口をついたりします。話しながら情報が整理されていけばいいのですが、話せば話すほど、自分が何を言っているのかわからなくなってしまう人もいます。

その結果、相手をげんなりさせたり、失望させたり、怒らせたりしてしまうことも……「要約力が低い」というのは、ビジネスパーソンとして極めて不利な状態なのです。

一方、「要約力」の高い人は、急に話をふられたときでも、沈着冷静に対応し、最適なアウトプットを実行することができます。話すまでのほんの数秒の間に、頭の中でパっと要約をすませることができるからです。即興のコミュニケーションはもちろん、アドリブが求められるやりとりも苦にしません。

では、「要約力の高い人」になるにはどうすればいいのでしょうか? どんなシチュエーションでも相手に上手く伝えることができ、自身の目的を達成するための「要約の3つのステップ」を紹介します。

ステップ1:情報収集は効率よく!

1つ目のステップは「情報収集」です。「相手に伝える」の質を高めるためには、まずは「伝えたい情報」「そうでない情報」を取捨選択しておく必要があります。

ひと言で情報と言っても、さまざまな種類があります。以下はその一部です。

  • 人から聞いた話(雑談含む)
  • 会議や打ち合わせで耳にしたこと
  • 現場で体験したこと
  • 五感を使って感じたこと
  • 研修やセミナーなどで勉強したこと
  • 書類や文書、データ、メールなどの情報
  • 新聞や書籍、雑誌などのメディア情報
  • ウェブサイトやSNS上の情報

なお、さまざまな情報が着火剤となり自分の中で生み出された「考え」や「意見」も情報のひとつです。同じく、情報をもとに立てた「予測」や「仮説」なども情報です。

もっとも、見聞きした情報や感じたこと、考えたことのすべてを「大事な情報」として扱おうとすれば、あっという間に脳がパンクしてしまいます。やみくもに情報を溜め込むことは、むしろリスクになります。

その点、「要約力」が高い人は、早い段階から情報処理を効率よく進めていきます。情報の要不要を手際よく見極めながら、インプットする情報を巧みにコントロールしているのです。

ステップ2:情報整理は優先順位でジャッジする

2つ目のステップは「情報整理」です。

情報収集を終えたとき、その情報はあなたの脳に収納されます。この収納時に、「要約力」の高い人と低い人の差がはっきりします。

「要約力」の低い人の脳は、外から部屋に持ち帰った不要なものを捨てずにいる人と同じです。整理整頓という概念がなく、床や机や棚はどんどんモノであふれてしまい、汚部屋と化します。この汚部屋からモノを探そうとなると、時間とエネルギーをとられてしまいます。「探したけど見つからなかった……」というケースも少なくありません。

一方、「要約力」の高い人の脳は、整然と片づけられた部屋と同じです。部屋に持ち帰ったもの(情報)を、無造作に床や机に放り投げるようなことはしません。要不要を手際よく判断したうえで、不要なものはゴミ箱に捨て、必要なものはグループ分けして収納します。

同時に、優先順位もつけておきます。アウトプットする確率が高いものは手前に置き、低いものは奥に置くイメージです。こうしておくことで、必要に応じて効率よく情報を取り出すことができます。

この「情報整理」のステップで求められるのが以下の3つです。

  • 情報の要不要を見極める
  • 情報をグループ分けする
  • 情報に優先順位をつける

情報の要不要を見極めたうえで、情報をグループ分けし、なおかつ情報に優先順位をつける。これがふたつ目のステップ「情報整理」で行なうことです。

ステップ3:情報伝達は「伝えないこと」から決める!

3つ目のステップは「情報伝達」です。

これまでストック(貯蔵)してきた情報をフロー(流れ)へと変換する。これこそが「要約力」のクライマックスです。

どんなにすばらしい情報も、溜めておくだけでは無価値です。「話す」や「書く」という形で、他者や社会へと流し、誰かの役に立ったときに、はじめて価値が生まれるのです。

なお、「情報伝達」のステップで最も大事なことは、伝える情報の絞り込みです。

理想は、手元にある情報の9割を捨てること。アウトプットするときは、「何を伝えるか」を決めるだけでなく、「何を伝えないか」を決めることも大切です。情報伝達がヘタな人ほど「何でもかんでも話をする」「順番を考えずに話をする」という症状に陥りがちで、その結果、相手に負担をかけてしまいます。

「エレベーターピッチ」をご存知の人もいるでしょう。エレベーターに乗っているくらいの「ごく短い時間」で、相手に説明・プレゼンすることです。限られた時間ですので、1秒もムダにはできません。このときに、「9割捨てる伝え方」ができる人は、最善の結果を出すことができます。

仕事をしていれば、報告、会議、打ち合わせなど、わずか数十秒〜数分で「情報伝達」をしなければいけない機会はよくあります。持ち時間の大小にかかわらず、そのつど「9割捨てる伝え方」ができる人が「要約力が高い人」です。

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