アフターコロナを見据え、出勤や勤務体系、オフィスの新しい在り方が模索されています。当然、営業活動もその一つ。従来の「アポを取り付けて相手方に出向いて対面で行う」というスタイルが、今後はZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議システムを用いた商談にとって代わるとみられています。
営業コンサルタントの横山信弘氏は、従来の「担当と会う→雑談でアイスブレイク→セールス後、相手方の社内検討を経て諸条件のすり合わせ」というフローから頭を切り替えなければならないと説きます。そのコツを「before→after形式」で書いた横山氏の著書『簡単だけど、一瞬で心をつかむ77のルール セールストーク力の基本』からpickupしてみてみましょう。
※本記事は同書の一部を抜粋・編集したものです
step1 オンライン商談への持ち込み方
before
売り手:……というわけで、ぜひ当社の商品をご紹介したいのですが、一度お時間をいただけないでしょうか?お客様:そう言われましても。まずは資料を送っていただけないでしょうか
売り手:そうですか。かしこまりました。それでは、以前いただいたお名刺の住所にお送りします
お客様:はい、興味があれば、またこちらから連絡しますから
電話でアポイントを取ろうとしたら「資料を送ってくれ」と言われたとします。その際、「かしこまりました。メールでお送りしましょうか」などと、反射的に応じるのはやめましょう。資料を送って、まともに見てもらえる確率はわずかです。もちろん、その資料を見て問い合わせが入る確率など、限りなくゼロに近いでしょう。
その際は以下の【After】のように、すぐに引き下がるのではなく「オンライン商談」に持ち込むのも1つの選択です。
after
売り手: ……というわけで、ぜひ当社の商品をご紹介したいのですが、一度お時間をいただけないでしょうか?お客様: そう言われましても。まずは資料を送っていただけないでしょうか
売り手: 資料をただお送りしても商品のよさをご理解いただくのは難しいですから、オンライン商談ではいかがでしょう。インターネットにつながるパソコンはありますか?
お客様:目の前にありますが
売り手: それではメールでURLを送ります。そのURLをクリックしていただけますでしょうか。そうすると、パソコンのディスプレイに私が登場し、この場で商談がスタートできます
お客様:え、今からですか?
売り手: 20分ほどお時間はありませんか。また別の日に時間をとっていただくより、この場ですぐできたほうが私もうれしいです
お客様: ……わ、わかりました。じゃあ、メールでURLを送ってくれますか
このように、丁寧に話していくと、意外に断られることがありません。「え、今からですか?」と言われてもひるまず、少し強引なくらいに誘ってみましょう。そしてオンライン商談は、リアルの商談よりも会話の内容に集中できるので商談がまとまりやすいのです。
step2 雑談は不要。いきなり本題で
before
売り手:本日はお時間をありがとうございます。今回は先月発売された新商品をご案内させていただきたく、お時間を頂戴しますお客様:はい、よろしくお願いします
売り手:それにしても、昨日の高校野球の準決勝すごかったですね!
お客様:え、まぁそうですね
売り手:近山投手の連投……過酷ですが、見ていると胸を打たれますよね。実は私の地元の高校でしてね、今回は――
お客様:……
メーカーの担当者が、新商品をお客様にプレゼンしているところです。担当者はアイスブレイクのために、昨日の高校野球の話をしています。しかし、お客様は関心を示していません。
オンライン商談では、お客様に向けて商品の説明、つまりプレゼンをすることに向いています。気をつけたいのが、よほど関係ができていない限り、雑談をしたり、ヒアリングをしたりするのには向いていないということです。ディスプレイ越しに質問しても、オンライン商談に慣れていないお客様だと「そうですね」「まあ、だと思いますが」と、気のない返事しか返してくれません。
after
売り手:本日はお時間をありがとうございます。今回は先月発売された新商品をご案内させていただきたく、お時間を頂戴しますお客様:はい、よろしくお願いします
売り手:早速ですが、先ほどお送りしたメールにある添付資料の5ページ目を見てください
お客様:5ページ目ですね、はい
売り手:こちらのリモート監視カメラですが、当初は子どもの見守りのために活用されていたのですが、実は介護にも活用されているのです
お客様:ほぅ、それはすごいですね。理由はあるんですか?
逆に、お客様は雑談なしに営業からの提案が来ることを求めているとも言えます。そのため「早速ですが」と切り出し、商品説明に終始することを心がけましょう。オンライン商談では、ふだんの対面形式よりも商品の魅力を伝えやすくなるというメリットもあります。有効に利用していきましょう。
step3 複数名が参加するオンライン商談では「まわし」が大事
実際の商談の場では、どうしても本社の部長など、ある特定の人にしか会えないものです。しかし、オンライン商談だと、日本だけでなく世界中の相手と会話することが可能になります。そのため、複数のお客様に意識を向けやすくなります。うまくまわすことでより多くの参加者にアピールできますし、相手の納得感を高めることにもつながります。
東京本社の部長:ええ。理解できました
営業:名古屋の所長さんはいかがでしょう
名古屋営業所の所長:はい。私も理解できました。意外と価格がリーズナブルだと思いましたよ
営業:ありがとうございます。上海の支社長さんはいかがでしたか
上海支社の支社長:ええ、私もコストパフォーマンスが高いなと思いました
このように、営業が参加者全員に話をふることでお客様側の参加意識も高まります。つまり、複数の人が参加するオンライン商談においては、バラエティ番組のMCのような「うまくまわしていく」力量が求められます。
営業は「場の空気」をコントロールすることが大切です。「それでは、画面にプレゼン資料を映しますのでこちらに注目ください。A本部長さんもB課長さんも、どうぞよろしくお願いいたします」など、うまく誘導して商談の主導権を握りましょう。
以上、オンラインセールスにおけるトークのコツを3点紹介しました。メールやチャットでは要件を簡潔に伝えるのと同様に、オンラインセールスでも的確かつコンパクトに伝えることが基本です。
そのほかにも、オンライン特有の事情として通信が回線状況によって左右されるので「センテンスは短く、ゆっくり話す」といった、発話法そのものやクロージングの方法など、身に着けておきたい点はほかにもあります。気になる方は、ぜひ本書を読んでみてください。