株主が投資するのは「リターン」が得られるから
「会社が倒産したとき、負債と自己資本、どちらが優先的に返済されるか知っとるか?」
「えーと、それはやっぱり返済義務がある負債ですか?」
「その通りや。つまり株主は、債権者と比べてお金が戻ってこないリスクが高いんや」
パチョーリは負債と自己資本の比較表に書き足した。
「ということは、少なくとも債権者よりは多くのリターンを得られなければ、株主は投資しようとは思わんな」
それはそうだ。万一のときに返ってこない可能性が高いのであれば、それだけ多くのリターンがなければ割に合わない。
「せやのに、自己資本は返済義務もないし利益が出たときだけ配当すればいいから、負債よりもコストが安いと思っとる奴が多い。これもとんでもない誤解やな」
「僕もそう思っていました。でも自己資本のコストって具体的にはいくらになるんですか?」
「自己資本のコストは、CAPMっちゅうモデルで求めるのが一般的なんやけど、これは理解せんでええ。ただ、自己資本のコストは負債のコストよりも高いことは理解しとき。で、この負債のコストと自己資本のコストを加重平均したものをWACCと言って、これが資本コストの計算方法なんやけどこれも覚えんでええで」
ルカ・パチョーリの教えによって、表面的な理解ではなく活きた知識を身につけていく僕。次回は2月28日公開予定です。