「歯」で評判を落とす日本人
歯学博士であり、数多くのベストセラーの著者でもある井上裕之氏は、新著『「歯」を整えるだけで人生は変わる』で、「日本人の“歯”に対する意識の低さ」に警鐘を鳴らしています。
「残念なことに日本人の歯に対する意識の低さは、欧米ではよく知られています。(中略)歯がきれい=日本人ではない、という認識が欧米ではできあがっているのです」
(60ページより)
「そこまで言われますか……」とも感じてしまいますが、海外での仕事も多い井上氏によればこれが現実。欧米のビジネスパーソンの多くは、「豊かな文化を持ち、経済的にも成功しているはずの日本人なのに、どうして歯が汚い人が多いのか?」と不思議に感じているそうです。なぜなら、彼らの国では歯の見た目を白く整えることは当たり前であり、幼少時から、虫歯や病気を予防するために歯科に通うことが習慣として根付いているからです。
日本では歯科矯正に対して抵抗感を持つ人も多いですが、アメリカでは矯正しないほうが不自然で、ましてや子どもの歯を虫歯だらけにしているような親は「虐待」を疑われてしまうそうです。白く整った美しい歯、清潔感のある口元は、その人の人となりやステータスを表すパーツとして、非常に重要視されているのです。
井上氏が危機感を覚えるのは、グローバルビジネスにおいて、日本人が歯のメンテナンスに無頓着なばかりに評価を下げている事実を知っているからです。いくら能力があっても、歯が汚いことによって「不潔」「教養がない」「自己管理ができない」というレッテルを貼られてしまっては、欧米のエリートと対等に渡り合えない、というのです。
「歯周病」をあなどってはいけない
もちろん、歯のケアをおろそかにすることのリスクは、見た目だけにあるのではありません。
歯並びが悪い状態や虫歯等によって抜けた歯を放置すると、噛み合わせがずれて(不正咬合)、下顎や背骨の傾きを招き、その結果骨格が歪み姿勢の悪さにつながります。それが、慢性的な頭痛や首・肩のこり、手足のしびれ、不眠や精神不安定といった心身の不調を引き起こします。
「歯周病」も危険です。細菌感染によって引き起こされる歯茎の炎症性疾患で、日本人の成人の8割以上が罹患していると言われています。
歯周病は自覚症状が少なく痛みも感じないため、いつの間にか重症化することが多い病気です。歯茎の腫れや出血といったサインを「まあいいか」と放置すると、気づいたときにはもう手遅れ、最終的には歯を失うことになります。
さらに恐ろしいのは、歯周病は命にかかわる病気だ、ということです。たとえば、心筋梗塞や狭心症などの「虚血性心疾患」の原因に、歯周病原性細菌が関係していると考えられています。その他にも脳梗塞や糖尿病、動脈硬化や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などに、歯周病の病原菌の影響が指摘されており、近年では、アルツハイマー病の発病に関連しているという研究結果も出ています。
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せっかく能力が高い日本のビジネスパーソンが、歯が汚いだけで活躍できないのは、本当に残念なことです。
ぜひ、1人でも多くの方に、この事実に気がつき、歯を白く美しくメンテナンスすることで、ビジネスパーソンとしての可能性を高めていったいただけたらと願います。
(本書「おわりに」より)
井上氏は本書で、日本人が世界のビジネスシーンで輝くために、また長く健康でいるために、虫歯や歯周病を未然に防ぐ「予防歯科」という選択肢と、日常的な自己メンテナンスの方法を示しています。
本書を手引きに、「歯を整えること」についてあらためて考えてみるのもいいかもしれません。