米国の堅調な雇用や年末商戦への期待に連れ高するように上がり続ける日本株市場。相場は上下するものなので、いずれは下げに転ずる時がきますが、そのときにうまく「空売り(カラ売り)」することができれば、株価の下落局面でも大きく稼ぐことができます。そのコツを全国で株式スクール講座を開いている冨田晃右さんの著書より見てみましょう。

※本記事は『株の「カラ売り」で堅実に稼ぐ! 7つの最強チャートパターン』の一部を抜粋・編集のうえ掲載したものです

カラ売りは難しくない

カラ売りのほうが稼ぎやすい?

私は個人投資家を個人トレーダーにすべく、株式スクール冨田塾という塾を運営しています。この塾では株のトレードを教えており、どんな株を買うのか? その株をいつ買うのか? その株をいつ売るのか? を教えています。

ただ、買いだけを教えているのではなく、どんな株をカラ売りするのか? その株をいつカラ売りするのか? その株をいつ買い戻すのか? というように「カラ売り」についても教えています。

なぜカラ売りも教えているのかというと、株式市場はいつも上昇するわけではなく、下降することもあり、株式市場の下降時には、カラ売りを使ったほうが通常の「買い」よりも稼ぎやすいからです。そのため個人トレーダーを目指す方には、「買い」だけではなく、「カラ売り」もやりましょう、と伝えています。

カラ売りは単に「買いの反対」

「カラ売りをやりましょう!」と言うと、必ず一部の人からこんな言葉が返ってきます。

「カラ売りは難しいからやめておきます」
「買いのほうが安全だから買いしかやりません」
また、「カラ売りを勧めるなんてどうかしてるんじゃないの?」「私にリスクが高い取引を勧めるの?」など、批判的なものまであります。

では、本当にカラ売りは難しいのでしょうか? やってはいけないものなのでしょうか?

いや、やるべきです。カラ売りが難しいとか、危険だとかいうのは単なる思い込みで、決して難しくないですし、危険でもありません。

カラ売りとは、ただ単に「買いの反対」なのです。通常の取引をしているときに、「上がる」と思ったものを買うのと同じように、「下がる」と思ったものをただ売る(カラ売りする)だけなのです。

業績が悪い株をカラ売りするのではない

株は業績がいいのに下がったり、業績が悪いのに上がったりすることがある

では、そのカラ売りですが、カラ売りを仕掛けるときとは、どのような局面になるでしょうか?

もちろん、株価が上がりそうなときではなく、下がりそうなときですね。一般的な個人投資家が株を買うときは、企業の業績を気にして、業績がよい株を買うことになります。では、カラ売りするときもそれと同じように、企業の業績が悪い株をカラ売りするのでしょうか?

私の考えは違います。

株価の値動きについて考えてみましょう。企業の業績のよいときにいつも株価が上がり、業績の悪いときにいつも株価が下がるのであれば、もちろん企業業績を常に気にしなければならないと思います。

でも、そんなことはありません。企業業績がよくても下がったり、業績が悪くても上がる株なんてたくさんあります。

株価は売りと買いの力で決まる

これらの現象をどう説明すればいいのでしょうか?

私はこう説明します。株価というものは、相場環境や個々の企業業績などがいいとか悪いとかを織り込んで、最終的にたくさんの人や、たくさんお金を持っている一部の人が買えば上がります。逆に、たくさんの人たちやたくさんお金や株を持っている一部の人が売れば下がります(カラ売りを含む)。

(P.76より)

要は、買いと売りの力関係です。難しい言葉で言うと需要と供給の関係です。「買い」と「売り」を比べて買いの力が強くなれば上がり、売りの力が強くなれば下がることになります。

株価チャートから力関係が読み取れる

では、これらの力関係を何から判断するのでしょうか? それが株価チャートです。

下図は、ある株の日足株価チャートです。縦軸が株価で横軸が時間(日数)です。この株価チャートから何がわかるのでしょうか?

(P.77より)

このチャート内の過去の値動きを見れば、「いつどこで買いが強くなったのか」(売りが弱くなったのか)、あるいは、「いつどこで売りが強くなったのか」(買いが弱くなったのか)がわかります。そして、その株価の動き自体や過去の周期やパターンを見ていれば、明日以降どのような状況になれば、買いが強くなるのか売りが強くなるのか、売りが弱くなるのか買いが弱くなるのか、がおおよそわかる局面が来るのです。こうして、株価の上げ下げの予測をしていきます。

「買い>売り」になりそうなら買い。「買い<売り」になりそうなら売り。

ただ単に「企業業績がいいから買い」とか「企業業績が悪いから売り」という判断をしないのです。あくまで、需給関係(買いと売りの力関係)を株価チャートで確認しながら売買をするのです。

高くなった株を売ってはいけない

天井を当てることは至難の業

株価の値動きを判断するときには、まずは株価チャートを見ること、そして、買いが強くなった(売りが弱くなった)ときに買い、売りが強くなった(買いが弱くなった)ときに売るということをお話ししてきました。

では、その強弱のポイントはどこなのでしょうか? カラ売りはもちろん、売りが強くなった(買いが弱くなった)ときに仕掛けるのですが、そのポイントはどこなのでしょう。

(P.79より)

一般的な個人投資家がイメージするポイントは、「株価が高くなったところ」とか「天井をうまくとらえて」などでしょう(上図)。でも、このような局面で仕掛けることは、なかなかできないわけです。

これ、やってみるとわかりますが、天井を当てることはなかなかできません。たとえば下図のようなチャートを見て、

(P.80より)

一般的な個人投資家が「高いところを売ろう」とすると、得てして次のようになります。

(P.80より)

株価はここでは下げず、もっと上がっていくのです。なぜこうなってしまうのかと言いますと、下降してきた株価が底を打ち、安値圏からどんどん上がってきて株価が十分に高くなってくると、まだまだ上がる可能性があるにもかかわらず、「もうそろそろ天井圏だ!」と思ってしまうからです。

カラ売りするのは下がる勢いのついた株

上がる株というのは、まだまだどんどん上がるわけです。意外とすぐには下げてこないものなのです。したがって、天井をとらえるのはかなり難しいことになります。

では、どうしたらよいのでしょうか? 「下がる勢いの出るところを売る」のです。

(P.81より)

ですので、カラ売りのポイントとしては、株価の天井圏をとらえようとするのではなく、このように下への勢いが出るところをとらえるようにします。

チャートで見る「空売り最強パターン」の例

移動平均線×デッドクロス×一目雲下抜け

次の図のチャートは、矢印の部分で、25日と75日の移動平均線がクロスを作っています。25日線が75日線を下に抜ける形です。これは一般的に「デッドクロス」と呼ばれる「売り」のサインです。

(P.145より)

このときの株価(ろうそく足)は、二つの移動平均線から下に大きく離れておらず、二つの移動平均線のすぐ下に位置していますので、信憑性はより高くなります。

これが25日と75日移動平均線のすぐ下に株価が位置しておらず、25日と75日移動平均線から下に大きく離れている場合は、たとえデッドクロスになっていたとしても“ダマシ”
の可能性もあるので、要注意となります。

というのは、このタイミングですと、株価はすでに下がりきってしまっている場合が多く、上にある移動平均線に向かって戻ってくる可能性があるからです。

仕掛けるポイントは、あくまでも「株価が動いてきた瞬間」や「まだ動く伸びしろがあるとき」となります。「もうすでに動いてしまったとき」ではありませんので、仕掛ける際にはくれぐれも注意してください。

ここで下図の一目均衡表を見ると、先のポイントより1日前のタイミングにはなりますが、ろうそく足が陰線となって雲を下に抜けています。

(P.145より)

しかし、ここではまだ25日線と75日線はデッドクロスになっていないので、デッドクロスのタイミングを待ってカラ売りを仕掛けることになります。

この三つのサインが出たのは、たった2日の間でした。このように、仕掛けの際に大切なのは、サインが数日間に集中することで、多くのサインが集中すれば集中するほど大きなトレンドが出る可能性が高まるのはもちろんのこと、急落も起こりやすく、短期間で大きな利益を得る可能性も高まってきます。

そして究極のサインは、ひんぱんには出現しませんが、「その日」一日にサインが集中する形ということになります。


本記事では、7つある「絶好の空売りチャンスの見分け方」の1つを紹介しました。本書ではその他6つのチャートパターンに加えて、利食いやロスカットの考え方、日経先物miniの解説など相場初心者に向けた情報が多数掲載されています。初心者トレーダーに役立つ情報が満載ですので、ぜひ読んでみてください。