「日本人ほど、心優しい人はいない」。
これは、韓国で生まれ、19歳で日本に留学し、20歳で出会った日本人の妻と結婚し、日本の大学で10年間にわたって教鞭をとり、世界9カ国を渡り歩いてきた私が心から感じていることである。
しかし、日本人の優しさというのは、一貫して外に向けられたものであると感じている。他者に迷惑をかけないように振る舞うなど、他者に対しては優しく接する一方で、肝心の自分に対しては、決して優しくなどない。
我慢するのがとても上手で、自分の意思に蓋をするのも上手。自分の意思よりも他者の期待や視線を優先するあまり、自分を置き去りにし、自分の人生であるはずなのに、その指揮権を自ら手放しているようにも見える。
そうしていくうちにいつの間にか、自分の頭で考えることができなくなり、自分の心で感じることも、自分の言葉で語ることもできなくなり、そして、自分の決断で行動する自由も奪われてしまう。
こんなにも心優しい人たちが、当の自分自身には優しくできていないこの現実を目の当たりにする度に、私はどうしようもないもどかしさを感じ、心が苦しくなる。
そもそも人生において、みんなに好かれる必要などない。それは、不可能であるだけではなく、そうしようとすればするほど、自分の大切なものが失われていくからだ。
そして、結果的に、大切な人や大切なことを蔑ろにしてしまうことにもなりかねない。嫌われても自分らしい表情をし、自分で考えた言葉を語り、自分で決めたことを実行すること。そういう確固たる自己信頼を持ち、一瞬足りとも人生の指揮権を手放さず、自分の心の声に従う「純度100%の自分の人生」を生きることこそが大切ではないだろうか。
これは『媚びない人生』(ダイヤモンド社)をはじめとした多くのベストセラーで知られる作家のジョン・キム氏の近著『心に従う勇者になれ』の冒頭にある読者への問いかけともいえるメッセージです。
本書は、まわりの目や評価など、世間の「すべき」に縛られて、本来の自分を見失ってしまった人の心を自由にするための100の言葉が紡がれた1冊。祖国を離れ、3大陸9か国を渡り歩き、自身の哲学を深めてきたキム氏が示す、自由に生きるための指針ともいえる言葉たちがまとめられています。本記事では、その内容をダイジェストで公開します。
全権を委ねた生き方であれば、
その生き方は常に正しい
他人に自分の人生の評価をさせてはならない。
他人の評価に左右されないことだ。
人生は、自分でしか作ることができず、自分でしか評価することができないもの。
自分の人生を決定する権限を自ら持ち、どんな瞬間においても、それを手放さないこと。自分の判断がもたらす結果に対して、自分自身が全責任を負う決意を持つこと。
目の前の時間はもう二度と戻ってはこない。今この瞬間を、深く刻み込むように生き尽くすこと。
たとえ失敗したとしても、自分を否定する必要はない。失敗したことを反省し、失敗からの教訓を、今日の成長や明日の成功の土台にすれば良い。その経験はやがて、失敗を犯した自分への感謝の気持ちに変わるから。
また、失敗した時に焦りや不安を感じて、もがき苦しむことは、自分の成長と真摯に向き合い人生を真剣に生きている証拠でもある。
もがいている自分こそが正解だと思っても良い。
どんな瞬間においても自分自身を見放さない覚悟を持とう。(本書14~15ページより)
やりたかったことだけを
やる人生を生きよう
心優しい人に限って、自分の心を蔑ろにして、まわりの人の期待に応えようと、がむしゃらに頑張ることが多い。
しかし、自分の人生は自分のもの。人生の指揮権は自分で持たないといけない。目的地を決めるのも自分であり、その目的地に向けて舵を取るのも、自分である。人間は、一人で生まれて、一人で旅立っていく。基本は一人なのである。
うまくいかないことがあっても、誰かの期待に応えようと頑張った過去の自分を全否定する必要はない。それはそれで、受け入れれば良い。また、過去の自分が今の自分から見て完璧ではないとしても、それを後悔し、苦しむ必要はない。その全ては、今を生きるための、これからの未来を生きるための糧になるものだから。目に見える全てのものから、生きる意味を見出し、生きる実感を得ることができるのだ。
人生はあなたが思っているほど、長くはない。それに最後の瞬間は、予告なくあっけなく訪れるかもしれないのだから、必要以上に怖がることなく、必要以上にためらうことなく、やりたいことを今すぐやれば良い。
今日という日は、誰かが生きたかった明日だと思って、今この瞬間に自分の命を刻むことだ。(本書20~21ページより)
新しい世界が見えてくる
分類や区別は、人間の思考を固定化する力を持っている。その分類や区別の線を「境界線」と呼ぶ。
境界線は人間の思考を制限する。その境界線は誰かの利益に紐づいて、恣意的に気まぐれに引かれている一つの線にすぎないが、その線を自ら越えていかないと、外にある新世界に出会えない。新しい世界への恐れよりも、新しい世界が自分に見せてくれる新しい景色に、それを味わった感覚に、ワクワクする自分でいよう。
もし、境界線を越えることにためらいがあるのなら、自分を過小評価しているのかもしれない。自分は、境界線の中に収まる小さな存在ではないと自覚せよ。境界線を越えた瞬間、あなたの後ろにあった境界線は消えていく。
この世の中を変えてきたのはいつだって、境界線を越え、「異端」と言われながらも、自分を信じ抜いて新しい地図と世界を描いた挑戦者たちである。社会が決めた境界線に縛られないことだ。たとえすぐに結果が出ないとしても、信念を貫き、努力を続けていけば、社会は、あなたが築いた新しい世界を受け入れてくれる。
あなたの人生にとって、誰かが引いた境界線が持つ意味など重要ではない。目の前にある境界線をどんどん越え、自分だけのボーダレスな世界で生きよう。(本書22~23ページより)
自分を失わなければ、
人生はいつでもやり直せる
たとえば、自分がミスをしたことで、自分だけではなく、周りの人にも迷惑をかけ、失望させることがある。
そんな時は、自分自身への信頼も揺らいでいくものだ。
もちろん、ミスによって起こったことには、全力で対処しなければならないが、生きている限り、自分に対する絶対的な信頼は失ってはいけない。
人生の価値は、どれだけ自分を信じられたかで決まる。自分という存在は、他者に侵されてはいけない絶対不可侵領域であることを忘れてはいけない。
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