「右側に商品がある」と買ってしまう
ショッピングでは、「右側のディスプレイ」が好まれます。
私たちには利き手があるので、体は必ずどちらかに傾いています。その影響から、無意識に利き手側にプラスイメージを持ち、逆側にマイナスイメージを持つのです。
ショッピングでも左側より右側のディスプレイが好まれる。その傾向を「右側の法則」と呼ぶ。ただし買い物客が右利き、左利きのいずれであるかによって法則は変わる。ある実験でページの右側と左側に印刷された簡単な説明文を読み、どちらを購入するか判断してもらったところ、右利きの人は右側、左利きの人は左側の商品を選ぶ傾向が見られた。
多くの小売店は、大多数が右利きであることを考慮して設計されている。新規顧客をはじめとする来店客が無意識に右周りに進んでいくのを防ぐため、動線には購入する確率の高い低価格商品を陳列する。すると買い物のスピードが遅くなり、多くの商品を見てもらえるようになるだけでなく、利幅の大きい商品スペースに誘導できる。
(第4章より)
「他人が買っている」とつい買ってしまう
私たちは、本能的に「他人の行動を見て、同じように行動」します。他人から受け入れられ、標準的だと評価されたい、という願望があるためです。
私たちは生まれて間もない頃から、社会的グループの一員としての立場を明確にしようとする。最初は家族のなかで注目してもらい、認めてもらうために、微笑む、笑う、泣く、かんしゃくを起こすというテクニックを身につける。成長するにつれて関わりを持つグループは、先生や仲間、職場の雇用主や同僚、友人や隣人へと拡大し、周囲と同類でありたいと望むようになる。
「猿まね」、つまり他者と同じことをするという経験則から、流行を追い、最新ファッションを身につけようともする。他人と歩調をあわせておけば、単独行動するよりも強靭な気持ちになり、自信も持てるのである。
そのような行動はストレスや不安を軽減し、消費意欲を強めると同時に、安心感からリスクの高い意思決定につながりやすい。
(第5章より)
他者と同じように商品を購入すれば、「集団思考」の心理が助長され、行動に対する本人の責任を放棄するばかりか、「正しいこと」をしているという確信が強まるそうです。
買い物をしているとき、脳の中では何が起こっているのか?
脳のしくみを利用したマーケティング戦略やショッピング現場の「買わせる設計・仕掛け」はどんなものがあるのか?
などなど、「買い物をする側」「売り込む側」双方にとって興味深い内容がふんだんに盛り込まれています。