「必要ないのに、つい買ってしまった……」
こんな経験は誰もがしています。
「無駄な買い物はもうしない!」と心に誓っても、しばらくするとまた同じことをしてしまいます。
でも、もし、あなたの意思ではなく「脳」がそれを買うようにあなたを動かしているとしたら?
そうなるといくら決意しても無駄です。「買いたがる脳」は止められないのです。
『買いたがる脳──なぜ、「それ」を選んでしまうのか?』(デイビッド・ルイス著、武田玲子訳)では、脳科学と消費者心理学の最新リサーチ結果から、「ショッピングの不思議」にアプローチします。買い物をしているとき、脳の中では何が起こっているのかを明らかにします。
ここでは、本書の内容から、「買いたがる脳」の興味深い実態をいくつかご紹介しましょう。きっと心あたりのある人もいるに違いありません。
うなずくとつい買ってしまう
うなずくだけで商品への好感度が上がります。
意外にも思えますが、このことを確かめた次のような実験があります。
ヴュルツブルク大学のイェンス・フォスターは、定番商品をコンピュータ画面上で水平方向と垂直方向に移動させる実験を行っている。
商品を目線で追うには、被験者は首を振る(水平方向に動く場合)か、うなずく(垂直方向に動く場合)必要がある。比較のために商品を動かさない場合も調べた結果、うなずいた被験者は(商品は垂直方向の動き)商品に好感を持ち、購入する確率も高かったが、首を振った被験者は(商品は水平方向の動き)商品に対する評価が低く、購入しようとしなかった。
(第4章より)
うなずくだけで無意識に好感を抱く理由は、幼少期にあるそうです。赤ん坊のころ、母親からの母乳を探すときに頭を上下させ、飲み終わると、頭を左右に振ることが指摘されています。また、ほとんどの文化で、うなずきは「賛成」、首を振るのは「反対」を意味するのは、そこに理由があるのかもしれません。
お客がうなずくような演出をすれば、商品に対する購買意欲は上がるのです。