非効率でも「あえて共有する」ことで、より効率的に

freeeでは、全社員合宿や月2回程度開催される何かしらのパーティーなど、一見非効率なイベントも多いそうです。クラウド会計ソフトによって業務の効率化を追求する会社なのに、意外でもあります。「逆説的ですけど」と前置きしたうえで佐々木さんは説明します。

「イベントや合宿などは、信頼関係をつくるための投資だと思っています。freeeという会社は効率化に力を入れていますが、効率化してつくった時間を、組織づくりとかチームワーク醸成のために投資すると、結果的に生産性があがると思っているんです。

いちばん最後の『あえて共有する』という価値基準とも関係します。これはチームとして働くときの作法として追加されました。

チームワークを良くしたい。当たり前ですよね。じゃあチームワークを良くするためにひとつだけやるとしたら何をやるかを考えたときに、相手がどんな人かを知る、ということが重要なんじゃないかな、と思うんです。

相手がどういう生まれ育ちか、いまの仕事は何か、どんなことをゴールとして考えているのか、こういったことを知っていると、たとえ意見が違うことがあっても相手を理解できるんですね。『コイツこんなわけのわかんないことばっかり言ってダメなやつだな』と思うんじゃなくて、『この違いはどこから生まれるんだろう』と考えられる。そしてだんだんと信頼関係ができてくる。

ですから、合宿などでは、お互いのプライベートとか生い立ちを話す時間を多くとります。ちょっとタブーっぽいこともあえて共有する。かつて、すごく仲の悪かった経営メンバーがそれで大の仲良しになったこともありました。そんな経験も踏まえて、『あえて共有する』を追加したわけです。

イベントといえば、変わりダネで『社内スナック』というのがあって、役員がカウンターに立って本当にマスターをやるんですが、普通の飲み会とは違う雰囲気になって、普段は話さないような話題が出たりしてすごく面白いんですよ。僕もマスターやって、とてもいい経験になった(笑)。社内コミュニケーションに役立っています。

効率化して時間をつくって、非効率なことをできるようにするとさらに効率化できるという、面白いスパイラルが生まれるんです」

佐々木大輔CEO(freee株式会社オフィスにて撮影)

「あえて共有する」は社内では「あえ共(きょう)」と略されて「私の週末を“あえ共”します」などと使われるそうです。イベントの最後に佐々木さんは「参加者が今日からすぐにできること」としてこの「あえ共」をすすめました。

「『あえ共』は毎週の全社ミーティングでも活かされていて、どんなことをやったら仕事がうまくいったのか、などを積極的に共有します。ときには、『会社の方針に反対するということを“あえ共”します』などとも使われます。なんでも言いやすくなるのかもしれません(笑)。

皆さんもぜひ、チームや仕事の仲間同士で、自分たちの生い立ちについて語り合ってみてほしいですね。僕も、ある大きなアメリカ企業のCEOと会食したときに、生い立ちをすごく詳しくしゃべらされて、『なるほどこういうことをさせられるんだ』と思いました。たしかに、その後話しやすくなるんですね。ビジネスリーダーのスキルとしてしっかり取り入れられているんだな、と感じました。

皆さんも、週末のプライベートな話とかはよくすると思うんですけど、もっと踏み込んで、ちょっと話しにくいような生まれ育ちのエピソードなんかも話し合ってみると、きっとチームがいい方向に向くと思います。試してみてください」

(文責:日本実業出版社)