「とにかく訪問件数を増やせ」は正しいか
よく「いいから訪問件数を増やしなさい」とマネジメントする上司がいます。しかしこの発想は、営業できる時間が無尽蔵にあればいいですが、勤務時間も厳しく管理される昨今においては時代遅れになりつつあります。
訪問件数ではなく、それぞれの訪問機会の有効性を検証すべきです。たとえば、次のように商談が前進していれば「有効訪問」と言えます。
・提案するための情報が入手できた
・提案内容を十分に理解いただけた
・競合との比較検討で優位に立てた
反対に、これらの前進がない訪問機会は「無意味」とカウントする勇気を持ちましょう。そして、時間に限りのある中で成果を上げるには、訪問件数を増やすことより有効訪問の率を向上させることに意識を向けます。
つまり、「月30件の訪問を60件にする」のではなく、「現在は50%しかできていない有効訪問を70%に上げる」と行動目標を掲げて、そのためにどんな工夫が必要かを考えることこそが大事なのです。
上司・先輩の武勇伝は懐深く「聞き流す」
いまの時代の営業に求められるのは、次のようなスキルです。
・お客様に対する提案力
・課題を把握する発見力
これらはコンサルティングやマーケティング的な発想を必要とします。つまり、営業として求められるレベルが以前より高くなっているのです。
ひと昔前、高城さんが営業職になった当時はまったく違っていました。「まずは数をこなさないと成果は出ない。1日の訪問件数を徹底的に増やしなさい」と、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる式に教わったそうです。
また、ルートセールスの場合でも「フラリと得意先に顔を出して野球や天気の話でもしていたら仕事はもらえる」から、やはり訪問件数が大事でした。
皆さんの上司たちも、そういう時代に活躍した人たちなのではないでしょうか。だから「俺が若いときにはな、飛び込み営業を1日に100件以上もこなしたもんだ」と武勇伝を語り、アドバイスしてくれるのでしょう。繰り返し聞かされると敬遠したくはなりますが、「すごいですね」と聞き流しつつ参考にしない、というのが正しい対応のようです。
武勇伝を語る、オールドタイプの先輩営業のスタイルなんて参考にしなくて構いません。みなさんが期待される営業スキルをしっかりと身につけて、期待される役割を全うしてください。時代は刻々と変わっているのですから。(178ページ)
『営業は必ず君の武器になる』の「はじめに」にはこうあります。
世間では、営業の「働きがい」に気づいていないビジネスパーソンがたくさんいるようです。日々の業務に忙殺されて気づかないのでしょうか? あるいは「そんなに魅力的な職業ではない」と決めつけてしまっているからでしょうか? いずれにせよ、それはあまりにもったいないことです。
本書で高城さんは営業の仕事を働きがいのあるものにして、さらにこれからのキャリアに最大限活かすためのコツを教えてくれます。一読すればきっと、上司から教わらなかった「営業という仕事の本当の魅力」が見えてくるでしょう。