まず、経理担当者なら会社の数字に関する4つのアクション、つまり「つくる・読む・活かす・報告する」ことができなければ仕事になりません。また、経営者についても「読む・活かす」は当然として、資金繰りを行うためには財務会計・簿記の知識を身に付けているのが望ましいと言えます。

本記事ではあまり深く触れない財務についても、上場企業勤務者はもちろん、非上場企業でも投資・買収案件は発生する可能性があります、経営者・経理担当者ともに知識として把握しておく必要があります。

一方で経理・財務以外の部門に所属している人は、自分では決算書を作ることがないため、簿記や財務会計の知識は必ずしも必要ではないでしょう(もちろん、知っているに越したことはありません)。しかし、新規事業の提案や客先での提案する際には必ず数字を使ったり意識したりするでしょうから、管理会計の知識があると非常に役立ちます。そのためには、前提となる「決算書を読み解くスキル」が必要になります。

決算書(財務三表)同士のつながりを、パズルを解くように見てみよう

それでは、損益計算書(P/L)・貸借対照表(B/S)・キャッシュフロー計算書(C/F)に書かれた数字がどのように連動しているのか、同書から見てみましょう(以降、本文・図ともに本書P.91-101より、一部編集のうえ転載)。

貸借対照表と損益計算書のつながり

損益計算書は、一定期間の会社の稼ぎである収益から負担した費用を差し引いて利益を計算します。一定期間の利益なので、次の決算がきたらまた利益は0(ゼロ)からのスタートになります。それでは、この一定期間内に稼ぎ出した利益は、決算が終わったあとどこにいくのでしょうか?

このことをわかりやすく理解していくために、家庭で管理する「財布」と、預金する「銀行」の関係で説明します。一定期間の収支は「財布」で管理し、月末の財布の残金を「銀行」に積み立てる、という人は多いでしょう。そして、その「銀行」に積み立てられたお金はそのまま貯蓄するか、株・不動産など投資に回すような場合を想像してみてください。

いったん「銀行」に積み立てられたお金が会計でいうと純資産のイメージです。貸借対照表の右下の部分です。毎年利益を出している会社は、基本的に一定期間の利益がどんどん純資産に積み上がっていき、厚みが増しているはずです。

(P.93より)

貸借対照表と損益計算書は会社のお金が動くプロセスをそのまま表しています。さきほど、貸借対照表のもう1つの見方として、右側部分(お金の調達または蓄積)と左側(運用)の関係を説明しました。

会社はお金を「外部(負債)」、または「内部(純資産)」から調達・蓄積します。調達・蓄積したお金は、その後将来お金を生み出す資産に形を変えますが(貸借対照表の左側)、このとき売上を生むためにも使われます(損益計算書の費用)。

会社の売上(収益)から費用を差し引いた利益(財布の中身)は、会社の純資産(家計でいうと銀行)にいったん積み立てられ、また資産や費用として運用されるという流れです。このように、貸借対照表と損益計算書は一体となり、会社の活動(資金の調達又は蓄積・運用)を再現しているのです。

貸借対照表とキャッシュフロー計算書のつながり

キャッシュフロー計算書は、貸借対照表や損益計算書の情報ではわからない「現預金の動き」を補足しています。

まず、貸借対照表とキャッシュフロー計算書のつながりを確認します。貸借対照表は最終結果として一時点の会社の蓄え(純資産)を表しています。同時に「どこから資金を集めてきたか(右側の負債と純資産)」と「集めた資金は何に形を変えているか(左側の資産)」を表していると説明しました。貸借対照表の左側には、資産の項目として現預金残高が一番上に表示されているはずです。

貸借対照表の一定期間の末日の現預金残高と、一定期間の入出金を示したキャッシュフロー計算書の最終値である現預金残高は一致します。どれだけ一定期間に現預金が増減したかは、キャッシュフロー計算書を見なくとも2期分の貸借対照表を並べて現預金残高の差額を計算すればわかります。

では、貸借対照表に対するキャッシュフロー計算書の存在意義とは何でしょうか?

奥さんが家計を握っている家庭の場合でたとえて考えてみたいと思います。ダンナさんが、家計を預かる奥さんに「今月のおこづかいが足りないので、前借りしたい」とお願いした場合、ただ残っているお金だけ示されても「何に使ったか」がわからなければ奥さんは納得しないでしょう。もしかしたら、パチンコ代などのギャンブルに消えてしまったかもしれませんし、株の購入など投資に必要な支出があったのかもしれません。