7月22日、東京世田谷区の紀伊國屋書店玉川髙島屋店において、旅行ジャーナリストで『旅育BOOK──家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ』の著者、村田和子さんによる出版記念トークイベントが行われました。ここではそのダイジェストをご紹介します。
生後4か月の息子との旅
自身の体験をベースに取材を重ね、「旅育」(旅を通じて子どもの生きる力を育むこと)について、さまざまなメディアを通じて発信する村田さん。その活動に興味を持ち集まったお母さん、お父さんたちを前に、息子さんとの旅をスタートしたきっかけから話し始めました。
「もともと旅が趣味で、会社勤めのかたわら2001年にはAllAboutというwebサイトで旅情報の発信を始めました。それと同時に子どもが生まれ、はじめて一緒に旅に出かけたのは彼が生後4か月、首が座ってすぐのことです。理由は、思い通りにならない育児にストレスを感じていて、少しリフレッシュしたかったから。行き先は千葉の温泉宿でしたね。
旅には慣れていた私でしたが、当時の子連れ旅は、設備は整っていないしとにかく大変。周囲の視線も『そんな小さい子を連れて……』というような理解のないものでした。
でも、大変だったんですが、それ以上にとてもリフレッシュできたんです。旅に出たことで家事や仕事から解放され、しかも子どもとじっくり向き合うことができた。子どもとの旅が元気をくれたんです」
成功体験になったことで、月に一度以上のペースで家族旅行に出かけ、自身の体験から、子連れ旅行のノウハウを積極的に発信し始めます。
そしてお子さんが3歳になったころ、ある変化に気づきます。
「子どもが見せる表情がとても豊かになってきたんです。笑顔や驚いたときの表情が、それまでとは全然違ってきた。また、旅では私も気持ちに余裕ができ『あれ、いつのまにかこんなことができるようになっている!』『こんなことに興味があったんだ……』と、成長を感じることが多くて、旅って親子の絆を育み、子どもの成長にとてもいいんじゃないかと思い、『旅育』を意識するようになったんです」
子どもを子ども扱いしないこと
旅は、日常にはない未知のものや人、出来事に出会うことができます。しかし村田さんは、「旅育」の効果はそれだけではないといいます。
「旅は、子どもの自信や自己肯定感を育むのにとても効果的です。もっともそのためには、子どもにも旅行の計画段階から関わってもらうことが大事です。多くの親御さんがやってしまいがちなのは、親が計画した旅行にただ連れて行くこと。子どもに要望を聞いたところでわからないだろうと、行き先も何をするかも親が全部決めて、しかもそれをきちんと伝えない、というケースがすごく多いんです。
子どもにとっては、連れて行かれる旅と、ちゃんと予定がわかる、自分の意見や要望が入った旅では、モチベーションがまったく違います。ちょっと予想と違うことがあっても、自分が決めたことだったら子どももがんばれます。また、親とコミュニケーションを取りながら計画を立てることは子どもの成長を促します」
「旅育をするうえで大事なことを一言でいうと、『子どもを子ども扱いしない』ということなんです。
ぜひ皆さんには、上手にお子さんの意見を旅に取り入れてほしいと思います。小さなお子さんには『AとBどっちがいい?』というふうに聞いてもいいでしょう。子どもにとっては、自分の気持ちを伝える練習にもなります」