「英語教育はできるだけ早いうちから始めたほうがいいってホント?」「早すぎる英語の勉強はよくないって聞いたけど……」

子どもの英語教育に対して、お父さんお母さんから疑問の声が多くあります。

そのような疑問に対して、脳科学者の茂木健一郎さんは、近著『英語が得意な脳の育て方』の中で「英語教育はできるだけ幼いうちからはじめたほうがいい!」と断言しています。脳科学の発展により言語を認識する脳の構造がだんだんとわかってきており、その見地からも、英語をはじめるのはできるだけ早いほうがいいそうです。

「英語で聴ける・話せる脳」の育て方についてフォーカスした第2章から、その理由をいくつか紹介します。

なぜ、5歳までに英語を学ぶのか

近年の脳科学の研究で、脳の80%は0歳から3歳、遅くとも5歳ごろまでには基礎が完成するといわれています。したがって脳が育つゴールデンエイジであるこの時期にどのような経験をするかが「英語ができる子」になるか、「英語ができない子」になるかの分岐点といえます。

この分岐点において、お父さんお母さんに心がけてもらいたいのが「子どもの脳にドーパミン・サイクルを育てる」ことだと茂木さんはいいます。ドーパミンとはうれしいことや楽しいことがあると分泌される脳内の神経伝達物質で、「脳内報酬」とも呼ばれています。

このドーパミンが分泌されると人間は気持ちが盛り上がり、快感を覚えます。その体験を何度か重ねるうちに脳は快感を再び覚えたくなり、「あの楽しいことをもう一度やろう」という指示を出します。この指示によって人は夢中になれることを見つけだし、それを成功させるために熱中し、やり遂げる力が育っていきます。

つまり「刺激を受ける→ドーパミンが出る→楽しい→またやりたくなる……」。この「ドーパミン・サイクル」が完成されると、まるで遊んでいるような感覚で、何事にも集中して取り組む子どもになれるのです。

5歳までの英語の土台づくりには、英語に対してドーパミン・サイクルをつくることができるかどうかが重要なポイントになっていきます。たとえば、「英語ネイティブと会話をするワクワク」「はじめて知る言葉と触れ合うドキドキ」「新しいことができるようになる楽しさ」などを感じることがたくさんあると、脳でドーパミンがどんどん分泌され、ぐんぐん英語を吸収していくのです。

勉強というよりは遊び感覚で。ワクワク・ドキドキを体験が何よりも大事なのです。

普段から英語の歌や音楽に慣れ親しんでおこう

脳のゴールデンエイジともいわれる5歳までに、ドーパミング・サイクルを完成させるには具体的にどうすればいいのでしょうか。茂木さんがまず提唱するのが、英語を音楽として楽しむことです。

脳には、言語処理をおこなっているブローカー野(や)という部位があり、言葉を文法に則って発話する役割を担っています。そこでは音楽と言語を同じもの、一体のものとして処理していることがわかっています。

このブローカー野の活性化には、英語を音楽として楽しむことが効果的だそうです。

子どもを見ていると、聴いた音楽をすぐに覚えて体を動かしたり、意味がわからずとも歌詞を覚えていくということがよくあります。これは小さな子ども特有の才能で、彼らは言葉を話せない代わりに、音楽で豊かなコミュニケーションをとれるのです。

英語の歌を聴かせた場合、子どもの脳はすぐにフル回転して「これまでに聴いたことがない歌」に全力で集中します。それに慣れていくと、あたかも自分が歌っているかのように聴くことができるようになるのです。

英語の歌に慣れ親しんでおくと、大人になってから英語を学ぶ場合ほど苦労することなく、自然と英語を聞きとれるようになります。