部下がついてこなくなる行動、とっていませんか?
「部下が思うように動いてくれない」
「いまどきの部下のことが理解できない」
このように部下との関わり方に悩む上司が少なくありません。マネジャー次第でチームや部署の生産性や仕事の成果に差が出ることは事実であり、どのようにマネジメントすればいいか多くの人が模索しています。
しかし、そうした悩みを一発で解決するような「絶対の正解」はありません。「ただし、あらゆる上司に共通する『やってはいけないこと』がある」と指摘するのは、投資コンサルタントでありながら著述家としても知られる午堂登紀雄さんです。
午堂さんは現在は個人で不動産投資コンサルティングを手がけていますが、かつて30人近くの従業員を抱える経営者として働いていました。しかし、リーマンショックの影響で資金繰りが悪化、スタッフは全員離反し組織が空中分解。当時を振り返り、「そのすべての原因は、社長である私にありました。私は『上司失格』だった」といいます。
当時の失敗を振り返りつつ、「やってはいけないリーダーシップ」について考察したのが近著『私が「ダメ上司」だった33の理由』です。行動についてフォーカスした第2章から、午堂さん自身の経験から得た「上司としてのあり方」をいくつか紹介します。
・部下から好かれようとした
よかれと思って部下に仕事のアドバイスをしたら、不満げな反応がかえってきた。そればかりか「うちの部長は、いちいち上から目線で押し付けてきてムカつくんだよなー」という部下たちの談笑が耳に……。
こんなことがあると、部下に嫌われているのではと、上司としての自信を失ってしまいますよね。しかし、部下に好かれることばかりを気にすると、過剰な遠慮や媚びるという態度につながり、部下になめられてしまうでしょう。
そこで午堂さんは、「部下から好かれようが嫌われようが、チームとして業績を上げるのが自分の役割である」という点にフォーカスすることを推奨しています。「結果を出すため」に必要なことであれば、部下にどう思われようと言うしかありません。それが言えないとしたら「上司失格」です。
ただし、そのときに重要なのは、「つべこべ言わずにとにかくやれ」と押さえてつけるのではなく、「なぜそうすべきなのか」という理由を懇切丁寧に説明することです。「こういった理由だからやるべきだと私は思っている。ほかにもっといい案があれば言ってね」という感じです。
さらに「この仕事を通じて、こういうスキルが身につく。それが将来のこういうときに役立つ」などと、その仕事を行なうことによって得られる本人のスキルや能力のアップを関連付けて説明することで、部下のやる気を引き出すこともできます。
そうした「好き嫌い」という感情にとらわれない行動によって、「この人の言うことさえ聞いていれば結果につながる」と信頼され、尊敬されるリーダーになっていくのです。
・部下を叱ることから逃げてしまった
叱れない人は、自分を優先している人ともいえます。もちろん、いつも叱られてばかりでは部下はうんざりしてしまいます。しかし、人を束ねる立場の上司は「叱る」ことから逃げてはいけません。なぜなら、本当に必要な場面で叱れないというのは、部下の成長やチームの維持よりも、自己保身に走っているといえ、「上司失格」だからです。
もし、職場のモラルやルールに反すること、手抜き仕事など問題な行為を放置すれば、「いまのはまずいって、わかるよね?」などと、毅然とした態度で注意する必要があります。叱らないことで「優しい上司」と思われても成果が伴わなければ本末転倒ですし、言うべき時にきちんと叱れる人のほうがむしろ一目置かれるものです。
ただし「叱る」とは、大声で怒鳴ったり、責任を追及することではありません。それは恐怖で支配することなので、長くは続きませんし、部下はそっぽを向いてしまいます。
上司の役割とは、部下やチームの力を最大限に発揮し、成果を上げることです。そして上司が叱る本来の目的は、部下に成長してもらうことです。つまり、叱るというのは部下が自分の間違いや課題に気づき、自発的に改善できるよう、自己成長する力を持たせることです。そこで、部下が自分のこととして受け入れやすいような言葉で伝える必要があります。
たとえばいったん褒めてから「いまのはよかった、次はここに気をつけてね」と改善点を指摘すれば、反発よりも「ああそうか」と受け止めやすくなるでしょう。また「原因はなんだと思う?」「次はどうすればできるようになるかな?」などと課題を与えれば、「叱責されている」という恐怖感が和らぎ、本人は自分で考えるようになります。
叱るときは、ねぎらい感謝してから改善点を指摘する。人格ではなく行為を叱る。注意するより相手に気づかせる。相手の意見を尊重する。そして叱るのは短く、そのあとも引きずらないことが重要です。
・「即断即決」ができなかった
無能な上司だと部下から見放されてしまうのは、決断力のない人です。逆に、決断が速いと部下は頼もしいと感じてくれます。
たとえば部下から「取引先から1割の値引きを要求されている」という相談を受けたとします。そこで「うーん、どうしたものかな……。難しいところだな……」などと曖昧な返事だけで、具体的な指示を出さなければ、ウチの上司は決断力がないという評価につながってしまいます。
もちろん、何も考えていない浅い決断ではまずいですが、即断即決を意識することで、部下の仕事を止めないことにもつながります。先ほどの例であれば「まず、5%で折り合いがつけられないか提案してみろ。ダメなら単価を1割引く代わりに数量を増やしてほしいと交換条件を出し、こちらも利益が確保できるように粘ってみるんだ」などと伝えてみます。そうすれば「部長はすぐに指示をだしてくれて頼もしい」と感じてくれるはずです。
この「即断即決」ができるようになるためには、「事前シミュレーション」が必要です。部下がどういう仕事をしているかを把握しておき、どういう問題が起きそうかも事前に想定しておく。さまざまな課題を先回りして考えておけば、いざというときに速く決断できます。
そのために、「あの件、どんな感じ?」「何か困ったことない?」などと、日ごろからの部下とのコミュニケーションと進捗状況の把握は欠かさないようにしましょう。
もちろん、すぐに決断できないこともあります。その場合は「わかった。2日後に結論を出す」と、きちんと結論までの期限を伝える。また「もう少し情報を集めてほしい。それをもとに判断しよう」と指示を出すなど、自分の上司の判断を仰ぐにしても、あるいは先送りにするにしても、とにかく即答する習慣をつけること。それが部下から信頼を得るための近道になるはずです。
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『私が「ダメ上司」だった33の理由』は、「行動」の他に「マインド」「対話」「やる気」「育成」など、さまざまな視点から自身の「上司としてのあり方」をチェックできる1冊です。著者の起業の痛烈な失敗体験から学んだ「教訓」は、「身につまされる」と評判を呼んでおり、部下との関係に悩んでいる人にとって、きっと役立つ書籍となるはずです。