いずれにせよ「平均ということはちょうど真ん中だな」という考え方をしてはいけない、ということになります。今後のビジネスでは統計をはじめとする数字の読み方、ひいては「数的感覚の有無」が評価に直結するので、本書で身につけるのをお勧めします。

なお深沢さんの著書に、もう少しやさしく数的感覚が身につくストーリー形式の本もあります。書店店頭で見比べて、自分に合ったほうを読んでみてください。

考えをわかりやすく見せるための「Google流資料作成術」

『Google流 資料作成術』(C・N・ナフリック著/村井瑞枝 訳)

自分の意見をまとめたら、次は発表です。会議やミーティングで口頭で意見を述べるだけのこともあれば、プレゼンのように資料を用意することもあるでしょう。ここでは後者に役立つ「自分の意見をわかりやすく伝える資料の作り方」について、ポイントを見ていきましょう。

3D化したグラフは何があっても使わない

近年、ビッグデータおよびその活用が重要になっていることにともない、「データビジュアライゼーション(データをわかりやすいグラフィックで表現する技術)」に注目が集まっています。媒体次第で表現のセオリーは異なりますが、パワーポイントや紙資料で見せる場合は「3D化したグラフは何があっても使わない」という鉄則があります。

その理由を示す例をみてみましょう。下図は各月で発生した課題の数を示すグラフで、1・2月はそれぞれ1個発生しています。しかし、棒の高さと罫線との位置関係によって読み取りづらくなっており「課題は0.8~0.9くらい発生したのかな? でも0.8個の課題ってなんだ?」などと、読み手の理解を妨げています。

(『Google流 資料作成術』P.67 図2.25より)

もう一つみてみましょう。市場シェアなど割合をしめすときは通常は円グラフが用いられますが、下図左をみると、遠近感がついてしまったためにサプライヤーAよりBのほうが大きく見え、誤認が生じやすくなっています。このように、正しく伝えるうえで3D化をするメリットは皆無といっていいでしょう。

(『Google流 資料作成術』P.64-65 図2.22および図2.23より)

ちなみに、こうしたシェアや比率を見せるときの「Google流の見せ方」は、上図右のように棒グラフを使うものです。トータルが100%ということを明示しておけば、棒グラフのほうが直感的に見比べやすいという理由によります。

もしかすると、円グラフから棒グラフに変えることによって何かが失われるのではないかと懸念する人もいるかもしれません。円グラフの特徴は、全体と全体を構成する要素を示せることにあります。

でも、そのグラフが読みづらいとしたら、そもそも何の意味があるでしょうか? 図2.23は、これらの棒グラフが全体で100%になることを示しているので、その心配にはおよびません。

(同書P.65より)

なお、別の記事でも「Google流の伝わりやすいデータの見せ方」を紹介しています。あわせて参考にしてみてください。


「自分の頭で考え、正しく伝える」方法については以上となります。今回の記事と前回前々回の記事を組み合わせれば、仕事で自分をアピールする基礎を整えることは十二分に可能だと思います。

さて、この「新入社員や就活生向け短期連載」、これまではスキルを身に付けるのに役立つ書籍とポイントを紹介してきました。次回は「人間関係の対処法」に役立つ書籍をご紹介予定ですので、お楽しみに!