南北朝鮮は同一の民族ではない?
韓国側の問題もあります。南北融和ムードを演出する韓国の文在寅政権の閣僚たちには、外交・安全保障の専門家がいないんです。外相の康京和さんという女性は大学教授で、NPOや国連の活動などに尽力されてきた民間人です。いわゆる外交のプロではない。また鄭義溶国家安全保障室長は、通商専門の外交官で安全保障の専門家じゃない。
この人たちが主導する平昌オリンピック以来の南北融和ムードは、私にはちょっと理解しがたいものがあります。
さて、文大統領は就任早々こんな演説をしています。
「韓国と北朝鮮の民族は5000年の歴史において同一の民族だ。だからわれわれはいまこそ和解し統一へと向かうべきである」
じつはこれは事実ではありません。彼らは大きく2つの民族に分かれます。満州人と韓人で、朝鮮半島の南北に分かれて存在していました。ソウルに漢江(ハンガン)という川が流れていますが、この漢江がかつての満州人と韓人との領域の境目だったといわれています。南側は韓人の地域、北側は満州人の地域でした。両者は、言葉も顔つきも全然違う民族です。
南部にいた韓人は農耕民族です。日本人と同じですね。食物を栽培して生活していました。
韓国といえばキムチですね。みなさんはこのキムチ、漢字でどう書くかご存知ですか? 「沈葉」と書くんです。当時の読み方は「チムチェ」です。これがなまってキムチと呼ばれるようになった。これがキムチの由来です。
なぜ彼らがキムチという食文化を生み出したかというと、彼らが貧しかったからです。韓国の土地は非常に痩せているんですね。岩盤質の山岳地帯が延々と広がっていて、とくに南部はそうです。
そのため水田をつくることがあまりできず、米や穀物がたくさん採れない。庶民はお米が食べられないから、野草や山菜をおもに食べていた。生で食べるとお腹をこわすから塩漬けにした。これがキムチの原型です。
当時、朝鮮半島に唐辛子はありませんでした。唐辛子は新大陸アメリカの原産で、大航海時代を経て17世紀にアジアに入ってきて、私たちがよく知るキムチになったんです。それまでは唐辛子のない水キムチを食べていた。農耕民族である彼らが生み出した食文化です。この韓人と日本人は、DNA的に見て、より近いんです。
民族の混血は進む、しかし……
一方、北部にいた満州人はツングース系の民族です。ツングースは「豚を飼う人」という意味を持ち、豚の飼育に長けていた、という説があります。狩猟民族で、DNAは日本人とかけ離れています。
満州人は中国では女真(じょしん)族とも呼ばれています。女真というのは、満州語の「ジュルチン」の当て字で「人々」という意味です。かつて中国人たちが満州人に「お前たちは何者だ」と聞いたとき、「われわれはジュルチンだ」と答えた。そんなことから女真族と呼ばれるようになったといわれています。
朝鮮の歴史をたどると、この満州人が圧倒的に強かったんです。朝鮮の統一王朝は新羅(しらぎ)と高麗(こうらい)と李氏朝鮮の3つがありましたが、このうち高麗と李氏朝鮮は満州人の王朝です。唯一、新羅だけが韓人の王朝です。
10世紀頃までは満州人と韓人ははっきりと分かれていました。しかし、高麗の王建(ワンゴン)が朝鮮を統一して以降、満州人と韓人の混血が進みます。その結果として、今日のような韓国人、北朝鮮人となっていくんです。ですから文大統領が、5000年間1つの民族でやってきたというのは、事実とは違います。