去る4月20日、著書『教養として知っておきたい 「民族」で読み解く世界史』が好評の宇山卓栄さんのトークイベントが、「梅田 蔦屋書店」で行われました。そのイベントの模様を2回に分けてお届けします。前編は「中国について」。
私たちが教わった中国を代表する「隋」「唐」といった王朝は、いわゆる“中国人”の王朝ではなかった? 多民族が入り混じる強大な隣国の歴史を振り返りながら、中国共産党政権がどのように大国を統治しているのかを解説します。
常に厳戒態勢を敷く中国
宇山卓栄氏:皆さんこんにちは。著作家の宇山です。
今日は、民族の問題について1時間ほどお話をさせていただきます。前半は中国の問題について、後半は朝鮮の問題を取り上げていきたいと思います。
私は、『教養として知っておきたい 「民族」で読み解く世界史』という本を1月に出版させていただきました。この本では中国と朝鮮に限らず、世界のあらゆる民族について事細かに書きましたが、今日は時間の制限もありますからすべての民族についてふれることはできません。ここでは、いま最もホットな、中国と朝鮮についてお話しさせていただきたいと思います。
さて、中国です。私は去年、北京に行ってきました。中国はどんどん変わっています。経済の発展はいうまでもありませんが、いま中国の変化が最もわかるのが、警備態勢です。
北京の警備はそれはもう、非常にものものしいですよ。50メートルおきに警官が立っていて、地下鉄に入るとき、デパートに入るとき、劇場に入るとき、博物館に入るとき、全部身体検査されるんです。ポケットの中を出して裏側を見せろとか、靴を脱いで靴底まで見せろとか、ものすごい厳戒態勢を敷いているわけです。
全人代とかAPECの首脳会談が開催されるとか、そういうときじゃないんですよ。日常でこの状態なんです。
なぜこれだけの警備をするのかというと、テロを恐れているからです。テロというのは普通、ISのような外国人が入り込んできて起こしますが、中国の場合はそうじゃないんですよ。国内の人間が起こすテロを想定して対策をとっているんです。中国では、国防費よりも国内のテロ対策費のほうが大きいといわれているほどです。
「民族独立」を認めない理由
ではどんな人たちがテロを起こすのでしょう。国内ですから中国人です。中国人なんですけど、中国は皆さんご存知のように多民族国家で、55の民族がいるといわれています。彼ら少数民族が反政府運動を起こすわけです。
そのなかでも2013年にウイグル人が起こした北京の天安門広場のテロは記憶に新しいでしょう。また2014年に雲南省の昆明で起きた大きな爆弾テロにも、ウイグル人がかかわっていたといわれています。
ウイグル人というのはいわゆる漢人ではありません。中国人かもしれないけれども。多民族国家・中国のなかの、ウイグル人なんです。
このウイグル人を中国政府は弾圧、支配をしていますが、それは彼らが住んでいる場所に資源が豊富にあるからです。レアアース、石炭、石油、とくにレアアースが豊富に眠っているのが新疆ウイグル自治区だといわれています。
この資源を確保するために、中国政府はウイグル人を強圧的に支配し、独立を絶対に許さないという立場をとっているわけですね。