講演会写真①貢献の例をあげます。

まずは書き手の専門性を活かすことで貢献できますね。専門的に知っていること、調べていることのなかから、何らかのお役立ち情報を読者に発信する。

ただし、たとえば私が文章の専門家だからといって、凝りに凝った比喩表現だけをブログに書き続けても、私がもっとも読んでほしいビジネスパーソンは読んでくれません。

だからといって、私が食べたランチについて毎日発信しても、読者から見ればまったく得るものがない。ブログとしてはうまくいかないでしょう。

そこで、自分の専門性と読者が読みたいことをつなげてみる、という発想が出てきます。たとえば、私がランチを食べたことについて発信するとき、「料理は食べる順番が大事です。じつは文章も、書く順番が大事なんです」と自分の専門性につなげる。そうすれば、読み手に貢献できる文章が書けるのではないでしょうか。そういう思考のやわらかさを、意識していただけるといいと思います。

文章とは一方的に発信するものだと思っている人が多いのですが、そうではなくて、コミュニケーションです。常に相手のことを考えて貢献するつもりで書けば、伝わる文章になります。

7.自問自答する

7つめ、最後は「自問自答する」です。

ずばり言うと、文章作成というのは自問自答の連続なんです。自分との対話ですね。自分に対して質問して、それに答えられるか。これ以外に文章の書き方ってないんですね。

たとえばこの講演会のことを書くのであれば、「講演会で私は何を得たのか」と自問自答する。「一番の気づきは何だったのか」、あるいは「5つ気づきをあげてみよう」などと自分に質問するんです。こうした質問に対して自分で答えを出して言語化できれば、他人にも伝わりやすい文章になります。ただ漫然と「よかったなあ」だけでは言語化されず、文章になりません。

「文章が苦手だ」という人は、じつは書くことが苦手なのではなくて、自問自答が足りないことが多いんですね。いろんなパターンで自分に質問してみましょう。簡単なものだけではなくて、深い質問、するどい質問、ちょっと答えにくい質問を自分にぶつけることで考えが深まります。

自問自答の方法として、読者の代わりに自分に質問する、という方法もあります。

神社についての文章を書いている人だったら、神社について知らない人が自分に何を聞きたがっているのだろうか、ということを想像して、ときにはリサーチして自分に質問していきます。いろんな質問が考えられると思いますが、それに答えていくことによって、「なるほどね」と思える文章ができあがっていくわけです。

そのためにも、ぜひ、質問力に磨きをかけていただきたいのと、それに対する回答力も身につけていただきたいです。5W3Hを知っていますか? 文章を書くときはこれらに答えるように書くとうまくいきます。

When(いつ)
Where(どこで)
Who(誰が)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように)
How many(どのくらい)
How much(いくら)

とくに「なぜ」という質問が大事です。「なぜ」という質問に答えると、文章に深みが出ます。なるほど、納得、と思ってもらえるような文章が書けます。

たとえば、私はラーメンが好きです、とだけ書かずに、なぜ好きなのか、ということに答えるように書く。そうすれば読者に納得してもらいやすくなります。

何か重要な文章を書くときには、自問自答だけではなくて、他の人にそれについて質問してもらうのもいい方法です。自分では思いつかない質問をしてくれるかもしれませんから。イベントの案内文だとしたら、「そもそもそのイベント、何がおもしろいわけ?」などの本質的な質問が出てくるわけです。それに答えられる文章じゃないと、面白いと思ってもらえませんよね。ぜひやってみてください。

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最後に、皆さんに「あなたは書ける」というメッセージを贈りたいと思います。私自身書けなくて、さんざん怒られてきました。記者時代には何度書いても直されて、全然OKが出ない。それほど書くことが下手だったわけですが、指摘されたことを活かし、「いい文章」と言われているものをたくさん読むことによって、コツをつかみ、上手くなってきたわけです。

文章は才能だという人もいますが、私はそうは思いません。基本を学んでコツをつかむことができれば、伝わる文章、読まれる文章、興味を持たれる文章を必ず書けるようになります。今回の本がそのきっかけになってくれれば、とてもうれしいです。

(終わり)


山口拓朗(やまぐち たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。22年間で3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて「伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れる文章&コピーの作り方」「集客効果を高めるブログ記事の書き方」等の実践的ノウハウを提供。200万人の会員を誇る中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか5都市で「Super Writer養成講座」も開催中。

著書は『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)ほか10冊以上。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。