3.具体的に書く
3つ目にいきたいと思います。「具体的に書く」です。
今みなさんが書いている文章よりも少しだけ具体的に書くだけで、伝わる率というのは大きく上がります。
【例文】
仮に決済システムをホームページに組み込む場合、少し費用がかかります。
この文章を読んで、何か気になるところがあったらおっしゃってください。
(参加者から)
「費用がいくらかわかりません」
ですよね。私もそう思います。5万円か50万円かわからないから行き違いが生じるわけです。言葉というのは共通する定義づけがあって伝わるものです。それなのに、いろんな解釈ができてしまう言葉を使うのは危険なんですね。
たとえばSNSで「きょう、格好いい男性に会いました」と発信したとします。読んでる人は勝手に想像しますね。それぞれの格好よさの基準でどんな男性か想像する。
SNSではそれでもいいとは思いますが、書く場所と内容によっては、具体的に書くことを意識することが大事です。たとえば、ブログで映画のレビューを書くときに「面白かったです」では伝わりません。アクションがよかったのかストーリーがよかったのか。そういったことを具体的に書かないと、言葉は伝わりません。
抽象的な言葉を使ってはいけないということではなく、具体的な表現をプラスする必要があるということです。相手に誤解されない、誤読されないようにすることが書き手の役目ですから。
とくに日本語は、抽象的な言葉が多いですよね。副詞、形容詞がとても多くて、英語などの何倍もあるといわれます。もちろん、それが文学的な表現の幅を広げてくれるという利点もあるわけですが、ビジネス目的で何かを伝える場合にはそれらに頼らないほうがいい。誤解が生じてやすくてお互いにとってよくないですから。
「納期は早めにお願いします」
“早め”って3日後か半日かわかりませんね。
「コピーは多めにお願いします」
こういう上司いますよね。足りないかな、と思って20部くらいコピーしたら12部でよかった、最初から12部っていってくれればいいのに……。
こういうことを避けるために、できるだけ具体的な言葉を使うことを意識していただきたいんですね。文章を書くとき、「もう少し具体的に書けないかな」という意識を持つだけで、皆さんの言葉がより伝わるようになります。ぜひ心がけていただきたいと思います。
(続きは後編で。5月10日公開予定)
山口拓朗(やまぐち たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。22年間で3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて「伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れる文章&コピーの作り方」「集客効果を高めるブログ記事の書き方」等の実践的ノウハウを提供。200万人の会員を誇る中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか5都市で「Super Writer養成講座」も開催中。
著書は『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)ほか10冊以上。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。