去る3月13日、紀伊國屋書店新宿本店にて、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)の著者、山口拓朗さんの講演会が開催されました。
出版社勤務を経て「伝える力【話す・書く】研究所」を設立、現在は書籍の執筆や講演、研修を通じて文章作成の実践的ノウハウを提供する山口さん。しかし新人記者時代に書いた文章はなかなか先輩たちに認められず、徹底的にしごかれたのだとか。
そんな体験も織り交ぜながら行われた講演会のタイトルは「伝わる文章・読まれる文章のコツ」。その内容を2回に分けて公開します。
(文責:日本実業出版社)
(前編)
すべての土台は「読み手本位であること」
山口拓朗氏:皆さん、こんにちは。
私は就職して6年ほど、出版社で雑誌の編集者と記者をやっていました。全国を飛び回って取材をして、それを会社に持ち帰って原稿を書くという毎日でした。
2001年に独立してからはいろんな雑誌やwebメディアで記事を書いたり、また最近はSNSを使って、文章をテーマに情報発信したりしています。
おかげさまでたくさんの本を出版させていただいているんですが、今回の本、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』は初めてストーリー形式で書きました。なので、本を読むのが苦手な方も楽しく読んでいただけると思います。
といってもただ楽しいだけではなくて、その中にはきっと皆さんのお役にたてる内容がちりばめられていますので、ぜひ実践していただきたいなと思っています。
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さて、文章を書くとき、皆さんはどんなことを大切にしていますか?
これは人それぞれ違うでしょう。メッセージが大事、という人もいれば読んだときのリズムを重視する人もいる。言葉の選び方や比喩の使い方、話の展開が大事だという人もいます。
私は、曲がりなりにも20年間プロとして文章を書き続けてきました。その私がいま現在たどり着いている結論があります。
それは、「読み手本位で文章を書く」ということです。
「読み手本位の文章」とはどんなものかを解説する前に、「書き手本位の文章」について説明しておきましょう。それは簡単にいうと、書き手が書きたいことを、書きたいように書いた文章です。
小中学生の作文ならそれで花マルです。文章表現を勉強するうえですごく大事なことだと思うので。しかし、社会人になって仕事で文章を書くときにはそれではいけません。
私が考える「読み手本位の文章」とは、読み手が知りたいと思っていて、読んだら喜んでくれるような内容が書けている文章のことです。
プラス、「わかりやすい」文章であることも重要です。言葉の順番や選び方、たとえ話がわかりやすくなっているか、主語と述語がねじれていないか。とにかく読み手の立場に立って書く、ということが一番大事だと思っています。
きょうは「伝わる文章・読まれる文章のコツ」と題して、7つのポイントをお話ししますが、基本的にはこの「読み手本位の文章」ということが土台になっています。ここがおろそかでは、いくらテクニックを磨いても伝わる文章は書けないからです。