2018年は例年より早めの「桜の開花宣言」が出されるところが相次ぎました。もうすでに散ってしまった地域もあれば、東北・北海道のように5月に入ってからが見ごろになる地域などもあるため、今しばらくは桜を楽しめる季節が続きます。
さて、桜は古来より短歌や文芸、芸能のテーマとして使われている日本人にとってなじみ深い花であり、関連する雑学も多くあります。ここでは、その一部を見てみましょう。
※本記事では種名などに関する記述は「サクラ」、他は「桜」と表記しています
※参考文献:『桜の雑学事典』(井筒清次著・弊社刊)
桜の品種
サクラは「バラ科モモ亜科サクラ属(もしくはスモモ属)」に属する落葉樹を指しますが、多くの人は「桜=ソメイヨシノ」というイメージが強いと思います。しかし、サクラにはヤマザクラやシダレザクラをはじめとする多くの品種があり、野生種は10種(分類の仕方によって多少異なる)、人工的なものも含めた交配で作られた品種は数百種類にも及びます。
ここでは、その中から代表的な品種をピックアップしてみてみましょう。
ソメイヨシノ(染井吉野)
卒業&入学入園や歌のモチーフになっている桜といえばこのソメイヨシノ。気象庁が発表する「桜の開花宣言」も、各地の気象台が基準として特定したソメイヨシノが開花したかどうかで判断されています。
ソメイヨシノの起源に関する正確な記録はありませんが、今は国立遺伝学研究所の竹中要氏が行った交配実験結果から「幕末頃に江戸の染井村(現在の巣鴨付近)でエドヒガンとオオシマザクラの交配によって生まれたとする説」が定説とされています。当初は桜の名所である吉野(奈良県)にちなみ「吉野桜」と呼ばれていましたが、のちに吉野のヤマザクラとは品種が異なることが判明。1900年に改めて「染井吉野」と名付けられました。
また、ソメイヨシノは接ぎ木によってしか増やすことができません。そのため、今あるソメイヨシノは元をたどっていくと特定の株を親とする、いわば「クローン」であるといえます。このため「同じような気候の地域に生えていれば一斉に咲き、一斉に散る」というお花見には都合のいい特徴がありますが、その一方で「病気に弱く、環境の変化に弱い」「木としての寿命が短い(約100年)」という弱点を有します。
ソメイヨシノ自体は人工交配で作られたものなので、派生した品種が多数あります。
なお、竹中要によるエドヒガンとオオシマザクラの交配によって生まれたものに「伊豆吉野」、「天城吉野」があり、同じ交配により、米国カリフォルニア州の農園から広まったといわれる「アメリカ」という栽培品種もあります。この「アメリカ」は、ポトマック河畔に、現在100本以上植栽されています。
また、カンヒザクラに天城吉野を交配した「陽光」もあります。また、竹中要によりソメイヨシノの種子から「衣通姫(そとおりひめ)」「咲耶姫(さくやひめ)」などの栽培品種が生み出されています。ソメイヨシノとカンザクラ雑種には「紅鶴桜(べにづるさくら)」もあります。
(『桜の雑学事典』井筒清次著 P.25より)
ヤマザクラ(山桜)
日本のみならず台湾や朝鮮半島などでもみられる品種で、ソメイヨシノが広まるまでは桜といえばこのヤマザクラを指し、古来より多くの歌人がその美しさを短歌で詠んできました。先にでてきた「吉野桜」も、このヤマザクラです。