『入社1年目からの数字の使い方』の著者・深沢真太郎さんは、ビジネス数学の専門家であり、全国の企業で「数字に強い」ビジネスパーソンの育成に携わっています。多くのビジネスパーソンと関わるなかで、「あともうちょっと数字をうまく使えれば必ず成果が出せるし、仕事も楽しくなるはずなのに……」と、とてももったいなく感じることが多いといいます。
数字に苦手意識のある人にとっては、その“ちょっと”がとてもハードルが高く感じます。しかし、学生時代に算数や数学が得意だったかどうかは、ほとんど関係ないそうです。「上司と話すときに数字を入れることを意識する」「つくった資料にひと手間加えて見栄えをよくする」。こうした「知っていれば簡単にできること」のコツさえつかめればいいのだとか。
今回は、深沢さんの近著から、この春働き始める新社会人や、仕事で少し行き詰まりを感じている若手社員が知っておくと役に立つ、「社会人が毎日の仕事で期待されている数字の使い方」について見てみます。
仕事で使う数字はたった2種類しかない
実はビジネスパーソンが仕事で使う数字は、たった2種類だけ。1つは「実数」と呼ばれるもの。もう1つは2つの実数を比較することでつくられる「割合(%)」と呼ばれるものです。
実数とは、100円、2人、30分……といった、ビジネスで動かす「ヒト・モノ・カネ」の「量」を表現する際に使われる、実態そのものを表現する「リアルな数字」のことです。
一方、割合(%)は、前年比110%の増加、顧客満足度95%のように、実数の「よい・悪い」「すごい・すごくない」といった「質」を表現する際に使われます。ビジネスにおいては「ちょっと」「ほとんど」といった曖昧な表現でのコミュニケーションが許されない場合が多々あります。そのとき「割合」を使うことで話を明確にすることができます。
ビジネスで使いこなす必要があるのは、この「たった2種類の数字」。そう考えると少しシンプルに思えてきませんか。
でも、「%」だけでは正確な情報にならない
割合は以下の数式で表せます。
こうして見ると、割合(%)という数字は「比べる数字」「もとの数字」という2つの実数から成り立っていることがわかります。
実は、割合(%)という数字はクセものなのです。ただ「割合(%)」だけを見ることは、「2つの実数」を見ないということにつながるからです。
たとえば、「顧客満足度80%」という数字があったとします。ここで割合(%)だけを見て「すごいね」と解釈するのは危険です。なぜなら、それは裏にある2つの実数の存在をまったく無視した状態での解釈だからです。2つのケースで考えてみましょう。
上記のケースでは、満足度は80%となりますが、調査対象があまりに少ないため、評価に値する数字であるかは疑問です。
こちらのケースでは調査人数は多いものの、対象が超優良顧客であることを考えると、逆に20%が満足と答えていないことのほうが重要といえるのではないでしょうか。
これらから、顧客満足度80%という数字だけで「すごい」と評価することは、正しくないとわかるはずです。割合(%)を使って「よい・悪い」「すごい・すごくない」といった“質”を読み解くときには、必ず「もとの数字」が何かを把握することが大切です。
「その割合(%)の分母(もとの数字)は何ですか?」ときちんと確認する、そうすれば本当の実態をきちんと把握することが可能になるはずです。