新年度が始まり、保育園にお子さまがご入園されたパパ・ママ、おめでとうございます! 子どもの入園を機に復職し、自分自身も新生活が始まったというママも多いでしょう。久しぶりの会社での仕事の準備、病気のときの子どもの預け先の確保、短い時間のなかでの家事など……、毎日やることはいっぱいあります。
なかでも一番大切なこと、「それはお子さんを『夜、寝る子』にしておくこと」だと、『0歳でも1歳でも大丈夫! 赤ちゃんが夜早く、長く眠る かんたん☆ねんねトレーニングBOOK』(以下『ねんトレ』)の著者であり、こども専門鍼灸師として多くのママのお悩みに答えてきた伊藤かよこ先生はいいます。
「赤ちゃんが寝ない」とスムーズな復帰は不可能!?
実は、『ねんトレ』を執筆したきっかけでもあるのですが、職場復帰後に「赤ちゃんが寝ない」と、とても困る事態を招くのです。たとえば本の制作で関わった編集者の恵子さん(仮名)は復帰当初、8カ月の太郎くん(仮名)を育てていました。当時の太郎くんは寝つきが悪く、夜泣きもする赤ちゃんでした。
話しを聞くと、保育園から帰って大慌てで食事やお風呂を済ませて、太郎くんの寝かしつけを始めるのが8時ごろ。でも太郎くんが眠りにつくのはそれから2時間後の10時くらい。そこから大人の食事をして翌日の準備をしようとすると、すぐに11時、12時です。でも日付が変わる頃には、また太郎くんが泣いて起きて……。そんな夜泣きは多いときで3、4回繰り返されるのだとか。
「赤ちゃんが寝ないので、昼間も眠くて仕事がはかどりません」と、彼女は途方に暮れていました。
実は、こういうママはとっても多いのです。赤ちゃんが夜、1人でちゃんと眠れないということは、ママも眠れないということ。ママが夜眠れないということは、昼間の仕事にも支障をきたします。
病気のときは、病児保育もベビーシッターも頼めます。働いているのだから、大抵のことはお金で解決できます。でも、「赤ちゃんと自分の寝不足」は、いくらお金を積んでも解決できません。だからこそ「子どもを夜、ちゃんと寝る子にすること」が大切なのです。
「赤ちゃんが眠らない」を解決する方法は?
では、どうやって「夜眠る赤ちゃん」にするか? そこでお勧めしたいのが赤ちゃんが自分で眠れるようになるねんね・トレーニング、通称「ねんトレ」です。
ねんトレにはいろいろな方法がありますが、働くママには「お昼寝は○時〜○時まで」「授乳は1日○回、何時と何時」というような、1日のスケジュール管理をしっかりして、スムーズに入眠させるという方法は向いていません。昼間のスケジュール管理は保育園にお任せして、寝かしつけの瞬間だけ工夫をするようなねんねトレーニングがおすすめです。
そこで、私がおすすめしているのが「眠りに落ちる瞬間だけは1人でベッドに寝かせる」というねんねトレーニング。
寝つきが悪かったり、夜泣きをしたりする赤ちゃんに共通しているのは、添い乳やおしゃぶり、抱っこなど、「ママと一緒」や「何かと一緒」の睡眠習慣がついてしまっているということです。
眠りに落ちるときはママの抱っこかおっぱい、おしゃぶりなど、何かを口に入れたり何かを手に持ったりして眠ります。でも、次に眠りが浅くなって目が覚めたときには、ママもおっぱいもありません。「どうして寝たときと環境が違うの!?」と赤ちゃんは驚き、泣いてママを呼ぶ……ということになります。
ですから、赤ちゃんが眠りに落ちる瞬間は、手にも口にも何も持たせず、1人でベッドで眠りにつかせてあげましょう。
やりかたはシンプルです。まず添い乳はやめましょう。それから、抱っこしていてもおなかトントンしていても、「あ、寝そう」と思ったらベッドに置く。1人で寝かせる。それだけです。
でも、「それだけ」がママにとっては難しいんですよね。1人にされた赤ちゃんは絶対泣きますし、泣くとかわいそうで抱っこしてあげたくなってしまうのがママです。
そこで、わたしの近著では1週間くらいかけて赤ちゃんの入眠習慣をつくる「ゆるゆるねんトレ」と、最短2日で赤ちゃんが眠れるようになる「スピードねんトレ」の2種類を紹介しています。ちなみに、編集者の恵子さんは「ゆるゆるねんトレ」でさえもかわいそうだと思ってなかなかできなかったのですが、ゆるゆるねんトレの準備段階である「泣いたらすぐ抱っこをやめる」ことから始めて、いま、太郎くんは一度寝たら6〜7時間は眠る子になっています。
反対に、「保育園に行ったことで生活リズムがくずれる」場合も……
一方で、以前はきちんと眠れていたのに「保育園に行ったことで寝なくなる赤ちゃん」もいます。生後早めにねんねトレーニングを始め、夜になれば1人で眠れていた。でも、保育園に行くとそれまでと昼間の過ごし方が違うので、夜眠れなくなってしまう、というパターンです。もしくは、環境が変わって興奮しすぎて眠れなくなることもあります。
そういう場合は寝る環境を見直し、興奮をやわらげる工夫をすることがおすすめです。おすすめは、鍼灸の知識をベースにした「スキンタッチ」です。これは赤ちゃんの体を金属製のスプーンでさーっと撫でさすることで、鍼灸と同じようなリラックス効果が生まれるやりかたです。使うものはスプーン、歯ブラシなど家にあるもので、かかる時間も最大でもその子の年齢+1分程度。つまり1歳の赤ちゃんなら1日2分のかんたんなスキンタッチで興奮がしずまり、眠りやすい心身の状態になります。
実は、私がこども専門鍼灸師として活動し始めたのも、いまは12歳の息子の夜泣きがあまりにひどかったことがきっかけでした。つらくてつらくて、「どうして寝ないの」と気が狂いそうだったことを覚えています。
赤ちゃんが寝ないと、ママも寝不足で元気でいられませんよね。そしてママが元気じゃないと、家庭も明るくなくなってしまいます。
明るい家庭で赤ちゃんがのびのび育つためにも、ママが元気で笑顔で仕事をして、育児に邁進できることはとっても大切です。
ですから、今回の本には赤ちゃんが眠らなくて不安なママの悩みが解決し、安心して子育てできる方法をたくさん詰めこみました。漫画やイラストでわかりやすく説明しているので、読む手間もかかりません。赤ちゃんが寝てくれなくてもう困ったというときに、ぜひご一読ください!
鍼灸師/こども専門鍼灸師。1967年生まれ。大阪府出身。慶応義塾大学文学部通信教育課程卒業後、リクルートフロムエー入社。会社員時代に悩んだ腰痛体験をきっかけに鍼灸専門学校へ進学。2000年はり師・きゅう師免許取得後、鍼灸カウンセリング治療院を開業。心理学や心理療法を取り入れ、患者さんと多くの対話を重ねる。出産後は息子の夜泣きに悩んだ経験から、小児はりや子どもの睡眠についての知識を得て、寝かしつけのカウンセリングや、リラックス効果の高いスキンタッチ指導を開始し、「こども専門鍼灸師」として活動する。同時にアドラー心理学に基づく親子関係講座「愛と勇気づけの親子関係セミナーSMILE」のリーダーとしても講座を開催。現在は「心とからだ」や「子育て」に関する講演や執筆を中心に活動している。日本アドラー心理学会会員、東京スキンタッチ会会員。著書に、認知行動療法をベースにした腰痛改善小説『人生を変える幸せの腰痛学校』(プレジデント社)がある。