しかし、「買って幸せになる物件を選ぶ」という考え方の軸はぶれないようにすることが大切です。極端な話「住宅購入をやめる」という選択肢を取ることがいい場合もあるのです。
ケーススタディで学ぶ「賢い住宅ローンの組み方」
ここからは本記事のタイトルにのっとり、千日氏に寄せられた読者相談から「かしこい住宅ローンの組み方」に関するケーススタディを2件みてみましょう(以下は、本書第7章から一部編集のうえ転載したものです)。
1:30代・年収の10倍の家を買う
―頭金2割で金利が0.1%優遇されるスーパーフラットとSの組み合わせ
居住予定の家族の年齢と年収 | 夫(30歳) 年収420万円 妻(32歳) 年収260万円(契約社員) 子どもはいませんが現在妊娠中で近々出産予定、2年後には2人目を予定しています。 |
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自己資金の額 | 1300万円(うち1000万円は義父からの援助) |
物件価格 | 4300万円 |
借入予定額 | 3440万円 |
物件のタイプ | 建売一戸建て |
相談内容 |
年収の10倍を超える家ですが、親の援助とこれまでの貯蓄があるので、なんとか買えないことはないかな……と思っていますが、やはり不安です。 家の購入資金とは別に、もしものときのために貯金を300万円残しておくつもりです。変動リスクに対処できる収入がないので、アルヒのスーパーフラット(頭金2割で0.1%金利引き下げ)がよいのかと思っていますが、いかがでしょうか? 4000万円の家を買うと生活費でほとんど消えていくので、家族で遊ぶレジャー代などが捻出できるか、老後の資金を貯められるかなどが心配で、あきらめたほうがいいのかとも思っています |
回答:頭金が2割あれば年収の10倍の家でも購入できるが、迷ったら引き返す勇気も必要
まだお若いですから、今の年収からの伸びしろも計算に入れてもいいと思いますよ。フラット35であれば、金利変動のリスクはないので、年数とともに返済は楽になっていきます。また、長期金利が低いときはベースとしてフラット35の金利も低く、貯蓄や親の援助で頭金を多く用意できるなら、アルヒのスーパーフラットは合理的な選択です。
スーパーフラットとフラット35Sは併用OK
フラット35Sとは、省エネルギー性、耐震性などに優れた住宅を取得する場合に、フラット35の金利を一定期間引き下げる制度です(※融資条件の詳細については、住宅金融支援機構のサイトをご参照ください)
そして、この「S」とスーパーフラットは重ねがけができます。つまり頭金が2割あると、次のようになるのです。
頭金が2割あると重ねがけができる
- 金利Aプラン:当初10年間0.35%引き下げ、その後完済まで0.1%引き下げ。
- 金利Bプラン:当初5年間0.35%引き下げ、その後完済まで0.1%引き下げ。
大手銀行の当初固定金利と遜色ない金利になるうえ、当初期間が終わったあとも安心の固定金利というわけです。
迷ったら引き返す勇気も必要
私ならば4300万円の物件でゴーサインを出します。ただし、これは住宅ローンの切り口から「無理なく完済可能か?」という面だけで判断した話です。
「ここまでやったのだから後戻りはできない……」
「費やした時間を無駄にしたくない……」
「がんばってくれた営業さんに悪い……」
「お金を援助してくれた、お義父さんの手前もある……」
こうしたいろいろな想いが交錯するかもしれませんが、引っかかりがあるなら勇気を持って撤退しましょう。「迷ったときはやめろ」です。契約前ならいくらでも引き返せます。
撤退は決して失敗ではありません。むしろ、何が問題かを知るチャンスなのです。勢いで買ってしまうよりも、一度立ち止まり、引き返したことのほうがよりよい経験になります。
マイホームの購入に必要なのは、十分な自己資金と冷静な判断です。自己資金は十分なので、ゆっくり考えて後悔のない選択をしてくださいね。
2:40代・10歳以上年の差夫婦共働き
―夫の定年退職後に半減する収入に合わせた住宅ローンの返済方法