「知識無しでも検索すれば情報が得られる」時代も今は昔。一定レベルのリテラシーがある人にとっては「まともな情報を得るには、ゴミ情報を除外できるだけの前提知識が必要」というのが常識であり、この傾向は医療や金融・不動産方面で顕著です。
公認会計士として中立的な立場から、ブログや各種メディアで住宅ローンを解説している千日太郎氏も次のように述べています。
ただ、住宅ローンに関しては、インターネットに全く恩は無いんですよ。インターネットで住宅ローンのキーワードを検索して一番に出てくるのは金融機関のホームページです。当然ですよね。
- 金融機関のホームページは『とにかくウチの商品が良いよ』としか書いてません。
- じゃあ比較サイトは? というと、ただ銀行のホームページへの広告を並べてるだけです。
- じゃあ個人サイトは? というと、自分だけが知ってるノウハウでこんなにお得に……で情報商材を買わせようとするサイトが強いです。
インターネットがホント役に立たない、実に珍しい分野です。
千日氏は、そうした見解をもとに「保険の勧誘なし、相談者の要望が無ければ特定の金融機関を勧めることもなし」をポリシーとして住宅ローンに関する無料相談を行っています。そこに「今後訪れる少子高齢化社会で、自分の老後と家族を守るための家選びはどうすればいいのか」という視点を加えて一冊の本にまとめたのが『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(以下本書)です。
それでは、本書に書かれている「住宅購入時にお金で損しないための心得」をもとに、不動産屋に対する考え方とケーススタディ形式で学ぶ「賢いローンの組み方」についてみてみましょう。
相手は「販売」のプロ。購入した客の人生に対する責任は持たない
数千万以上の金が動く不動産購入は、ある意味で「人生最大級のプロジェクト」とも言えます。不動産投資ならともかく、住宅を購入するということは「(ローンを払いながらも)家族の人生の幸せを願い、暮らすための場所を確保する」ということにほかなりません。
一方、売る側から見れば不動産なんて「ただの商品」でしかありません。「一世一代の買い物」と煽って気分を盛り上げ、臨場感を演出し、テンションを高めることで早期の契約締結を目指すのが彼ら・彼女らの仕事です。
こうした事情は、融資してくれる銀行でも変わりません。家を買い、ローンを払ったうえで幸せになるには、自分が知識をつけるしかないのです。
不動産会社の営業マンは「売るまでが仕事」です。私たちが定年後にローンが返せなくなって家を売却し、残債が残り、年金をやり繰りして賃貸の家賃を払いながらローンを返済しようと、まったく関知しません。
銀行の融資担当者は「貸すまでが仕事」です。私たちが定年後にローンを返せなくなったら、第一順位の抵当権を実行して家を売却すればいいのです。彼は審査マニュアルに沿って融資を実行したまでのことです。
自分の老後は自分にしか守れません。老後破産の当事者は他でもない「自分」だからです。よく、「借りられる金額と返せる金額は違う」といわれます。しかし少子高齢化によって低成長時代に突入した今の時代、肝に銘じなければならないのは、「返せる金額と老後を生きられる金額は違う」ということなのです。
(本書P.52より)
先にも述べた通り、あなたの人生は家を買ったあとも続いていくものです。不動産業者は売上を上げるために「回し物件(本当に売りたい家で契約させるための引き立て用物件)」を用いて揺さぶりをかけてくるほか、あらゆる手段を使って契約締結を目指してきます。