その他大勢に埋もれない「3つの特徴」をつくろう
―そこにはなにかポイントがあったのでしょうか?
この経験から気づいたのが、フリーランスとして独立するときに一番最初に考えなくてはいけないのは、「自分が何者であるか」ということです。大勢のフリーランスに埋もれず、お客様から「あなたに仕事を頼みたい(しかも高値で)」と思ってもらうには、際立った強みをつくらなくてはいけません。自分に希少性がなければ、「誰でもいい仕事」ばかり頼まれてしまいます。
大切なのは、複数の特徴をかけ合わせた「売り」を持つことです。たとえば、「ライター」と名乗る人は珍しくありませんが、「ビジネス系のライティングに強い」というと少し絞られます。さらに、「これまで1000名以上の経営者にインタビューをしてきた」となれば、他の人と比べて希少価値が大幅に高くなります。
このように、複数の特徴を掛け合わせることで、希少価値の高い人になり、代わりのいない存在として仕事がやってくるようになります。
もし今フリーランスの人、これからなろうとする人は、自分の「売り」を3つの特徴から考えてみてください。
―3つの特徴とは?
1つ目の特徴は「職業」です。ライターやイラストレーターなど、ふだん名乗っている職業がこれに当てはまります。2つ目は「ジャンル」です。ライターやイラストレーターであれば、Web系や出版系など。さらに、3つ目の「専門分野・得意分野」で手掛ける仕事の方向性を絞り込みます。ライターであれば「旅行記事」や「グルメ記事」、イラストレーターであれば「女性のライフスタイルのイラスト」や「動物のイラスト」などです。
こうやって特徴を絞り込み掛け合わせることで、他のフリーランスと差別化できるようになります。すると、「この人はライターで、Web媒体を専門にしていて、旅行記事を書いている」というようにお客様が理解しやすくなり、あなたに頼みたいという依頼につながりやすくなります。
得意分野は「自分のなかで平均よりも上のこと」でOK
―これといった得意分野が見つからないという人もいそうですが
そうですね。人と差別化できるほどの得意分野がない、また、得意分野を絞り込んだけれど、現実の自分はまだ能力的に追いつけていないという人もいるかもしれません。そうなら、「3つの特徴」はフリーランスとして働きながら決めてもよいと思います。それに、仕事で経験を積み重ねていくことで、より得意になっていくものです。
「これを得意といってもいいのかな?」と悩む人がいるかもしれませんが、「自分の中で平均よりも上」のレベルでこなせる仕事だと感じたら、得意分野としてOKだと思います。
実際に私自身、「自分には何ができるんだろう?」と迷走していた時期がありました。そんなとき、お客さんからのアドバイスをもとにWebマーケティングに加え、Web広告の勉強をはじめたことが人との差別化にもつながりました。
その結果、最初は「セカンドライフ」という扱うテーマ選びで失敗しましたが、その後Webマーケティングの仕事を取ることができ、徐々にスキルも上がっていき、今では「これが得意分野だ」と胸を張っていえるまでになりました。
―フリーランスの方、これからフリーランスになろうとしている方にメッセージをお願いいたします。
まず私が独立した10年前に比べ、フリーランスという働き方の認知度が増し、個人に仕事を依頼することに対しての企業の抵抗感が明らかに減っています。また労働人口の低下やITテクノロジーの発達などによって、必要なタイミングでプロフェッショナルな仕事をしてくれる人が求められるようになり、今では職種の一つとしてかなり「食べていきやすい」状況になっていると思います。
ただ当たり前ですが、独立直後の売上を立てるための目処(お客さんの候補)がないと、ものすごく苦労します。また私のように会社員時代に身につけたスキルが活かせないような状況だと、これまた苦労します。本書に詳しく書いているのですが、新しい領域で仕事を取るのはとても大変なので、競合がいつつも一般的にニーズがある仕事をしっかりと取るということが重要になります。
また、企業に勤めるのに比べるとどうしても弱肉強食な市場という側面があり、それも、実力に正比例しない部分も多いのが現実です。フリーランスとしてやらなくてはいけないことは、営業、実務、お金の管理(会計)とさまざまですが、その中で「失敗しやすい理由」「成功しやすい理由」は、それぞれの活動のなかで、ある程度言語化できると思っています。
本書では、そのエッセンスを可能な限り分かりやすくまとめてみました。今まさにフリーランスとして独立しようと迷っている方、また独立したもののどうすればうまくいくのか困っている方に少しでもヒントになればうれしいです。
山田 竜也(やまだ りゅうや)
同志社大学哲学科卒業後、3年半の会社員生活を経て、2007年にフリーランスとして独立。フリーランスになった当初は900万円もの借り入れの返済に追われ自己破産寸前になったり、うつ病になって2年ほど実家で療養しながら仕事をしていたりしたこともあったが、稼ぐための仕組みを身につけた結果、現在はずっと1000万円を超える収入を確保している。専門分野は、Webマーケティング。成長スピードの激しいスタートアップや、NPO法人はとくに得意。初期から支援している企業の数社は近々上場予定。コンサルティング、広告運用、Web管理の他、自分の所有するメディアからの広告収入、セミナー講師、著書印税、イベント売上など複数軸の収入を持つポートフォリオワーカーでもある。ペンネームの山田案稜としては、著書に『小さな会社のWeb担当者になったら読む本』(日本実業出版社)他、共著に『世界一ラクにできる確定申告 』(技術評論社)などがある。