1~3のケースについては、下図のようになります。たとえば「当初100万円で購入した仮想通貨が150万円に値上がりしたので、売却して利益確定させた」場合(1のケースに該当)は、150-100=50万円が課税対象所得として計上されます。一方、所有する仮想通貨のうち、換金・使用をしていない分の値上がり(=含み益)は、課税対象所得に計上されません。

仮想通貨に関連する確定申告の義務が発生するタイミングの一例(上記1~3の場合)

4のケースの場合、分岐(フォーク)によって新たに生じた仮想通貨を取得した時点では、課税対象となる所得は発生しません。それを換金・購入に使用した時点で課税対象となる所得が発生します。その際、計算に必要となる「新たに誕生した仮想通貨の取得金額」は0円として計算されるため、実質的には使った分がそのまま課税対象金額として扱われることになります。

仮想通貨に関連する確定申告の義務が発生するタイミングの一例(上記4の場合)

5の「マイニングによる取得」の場合、取得した時点で課税対象とみなされます。その場合、取得時点の時価からマイニングに要した必要経費を差し引いた金額が課税対象所得として計算され、仮にその通貨を使用した場合、使用時点の時価と取得時点の時価の差が課税対象所得としてみなされます。

仮想通貨に関連する確定申告の義務が発生するタイミングの一例(上記5の場合)

その他、雑所得で確定申告するときの注意点

それでは、仮想通貨の売買益やサイドビジネスとしての原稿料収入など、雑所得全般で確定申告をするときの注意点について見てみましょう。大きなポイントとして、以下のようなものがあります。

  • 書類はしっかりそろえる
  • 経費はもらさず計上する
  • 給与所得者で、給与所得以外の雑所得などが年間合計で20万円以下のときは、申告は不要。ただし、申告したほうがトクになる場合もある

書類について

たとえば「副業で原稿料収入があるため確定申告を行う」場合で考えると、「確定申告書」「源泉徴収票(給与所得者の場合)」など以外にも、原稿料の支払元からもらう「支払調書」や税務署でもらう「所得の内訳書」などが必要です。また、仮想通貨による所得がある場合はその取引履歴がわかるような書類が必要となります。

経費について

経費の計上は、節税をするうえでも非常に重要になってきます。先の原稿料収入の例でいえば、出版社や取材元との連絡に要した各種通信費や原稿の郵送料、資料となる専門書の購入費など、経費を漏らさず計上するのが節税するうえでも重要になります。

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(『平成30年申告用 あなたの確定申告』P.131より、一部編集のうえ引用)

雑所得が20万円以下でも申告したほうがトクになるケース

前述の通り給与所得者で、給与所得以外の雑所得などが年間通して20万円以下のときは確定申告が不要ですが、申告したほうがトクになる場合があります。事例としては下記のようなケースが考えられます。

たとえば、原稿料などでは、ふつう相手先の会社から支払われた金額の10.21%(1回の支払金額が100万円以下の場合。100万円を超えると、超えた部分は20.42%)が税金として源泉徴収されています。もし、この原稿料収入が25万円だとすると、2万5525円が源泉徴収されているのです。しかし、この計算の中では必要経費は考慮されていません。

仮に、このときの必要経費が10万円だったとすると、それを差し引いた雑所得の金額は15万円。年間所得の税率が10.21%の人は、納めるべき税額は15万円の10.21%の1万5315円でよいのです。

つまりこのような人は、源泉徴収された2万5525円と納めるべき税額1万5315円との差額である1万210円の税金が確定申告によって還付されるわけです。必要経費と自分の税率とをよく考えてみましょう。

(『平成30年申告用 あなたの確定申告』P.130より引用)


以上、仮想通貨取引を含めた「雑所得で確定申告を行うときのポイント」についてみてきました。

昨年来の報道も手伝って仮想通貨取引に参入した人も多いと思いますが、これらの所得を申告しないでいると税務調査が入ることになるほか、脱税扱いとなると「無申告加算税」「延滞税」「重加算税」などが加算されることもあり得ます(なお、税金は自己破産などの手続きを行ったとしても免責されません)。

仮想通貨に限らず、投資・投機を行う際は「うっかり申告を忘れてしまった」「海外の取引所を使っているからばれないと思った」などで申告を怠り、あとでより重い税金を課されることがないように十分注意する必要があります。必要であれば、税理士に相談することを検討してもいいかもしれません。