ペルソナを設定したことに満足してはいけません。設定したペルソナを社内で「見える化」することが大切です。単にイントラネットにアップしたり、掲示板に貼ったりするだけでなく、確認のためにメールを打ったり営業会議でプレゼンテーションをするなど、「見せる化」までするとよいでしょう。

議論がまとまらないときなどにも、「ペルソナ(山本優子さん)だったらどう思うか」などと考えることで、顧客視点で物事を判断できます。

「目の前の顧客」をペルソナに設定する

ペルソナは企業の規模を問わず効果を発揮します。ある自転車店のオーナーは、地域の少子高齢化に悩んでいました。子ども用の自転車を買い求める人が減り、高齢であることを理由に自転車に乗らない人が増え、売上が年々縮小していたのです。

5533
『課題解決につながる「実践マーケティング入門」』理央周・著

SWOT分析(※)をすると、小さなお店ならではの懇切丁寧なサービスが顧客から評価されていました。オーナー自身が得意なカテゴリーは、高価なスポーツバイクです。

まず、オーナーは「自転車はどこで買っても同じだから、少しでも安いほうがいい」という価値観の人たちをターゲット層から除外し、「ちょっとくらい高くてもいいから、いいスポーツバイクをアドバイスしてくれる店がいい」という人たちをターゲット層に設定しました。

あるとき、40代後半のお客様の北野さん(仮名)が、スポーツバイクを買いに来店し、乗り方を熱心に聞いてきました。このときオーナーは、「この人がペルソナだ! うちの理想のお客様」と思ったそうです。

以来、ペルソナを「北野杜夫さん、48歳。愛知県名古屋市千種区在住。家族構成は大学生の子どもが2人。平日はバリバリ働き、週末はサイクリングに出かけ、自転車やパーツにはお金をかけて質のよいものを購入したい」と設定しました。

ついに、一大決心をし、子ども乗せ自転車や子ども用の自転車などのシティサイクルを店内から撤去し、店頭で販売することをやめました。スポーツバイクの適正な乗り方が診断できるマシンを購入、スポーツバイク専門店に業態転換したのです。

目の前のお客様をペルソナとして設定し、集中戦略をとった結果、独自化に成功し高付加価値を提供できるようになり、収益も好転したのです。

(※)SWOT分析──事業戦略やマーケティング戦略を構築するときに使うフレームワーク。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字から。


2017年11月8日(水)、紀伊國屋書店新宿本店にて出版記念講演会開催決定!

講演タイトル

課題解決につながる「実践マーケティング」入門
~がんばっていても「なぜか売れない」と悩んでいるあなたへ~

■「誰に、何を、どう売るか」で整理すれば課題が見えてくる!

「自然に売れる仕組み」をつくるときのポイントは、「誰に(ターゲット設定)、何を(商品・サービス開発)、どう売るか(コミュニケーション戦略)」で整理すること。そうすれば、全体感を持って本当に解決すべき課題に取り組むことができます。

演者の理央周氏は、アマゾンやマスターカードなどでマーケティング・マネジャーを務めたコンサルタント。実践的でわかりやすい説明に定評があります。今回の講演では、理央氏がよく相談や質問を受ける課題をピックアップして、解説します。

日時|2017年11月8日(水) 18:45開場 19:00開演
会場|紀伊國屋書店新宿本店8階 イベントスペース
参加方法|参加には整理券(先着50名)が必要です。
※お問い合わせ・お申込み方法は紀伊國屋書店様のホームページをご覧ください。

著者・講演者プロフィール

理央周(りおう めぐる)
マーケティングアイズ株式会社代表取締役
本名、児玉洋典。1962年生まれ、静岡大学人文学部経済学科卒業。大手自動車部品メーカー、フィリップモリスなどを経て、米国インディアナ大学にてMBA取得。アマゾン、マスターカードなどで、マーケティング・マネジャーを歴任。2010年に起業し翌年法人化。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年から2017年まで、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科で准教授として教鞭をとる。著書に、『「なぜか売れる」の公式』『8割捨てる!情報術』(ともに日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)などがある。