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『課題解決につながる「実践マーケティング」入門』理央周・著

よく誤解されることなのですが、「絞る」ことは「ほかを捨てる」ことではありません。「絞ったターゲット層を中心にビジネスをする」ということです。「自社プロダクトを一番よく買ってくれる人はどんな人か?」「自社プロダクトを一番必要としている人はどんな人か?」「自社プロダクトで一番喜んでくれる人はどんな人か?」を考えれば、ターゲット層は浮かび上がってくるでしょう。

中心となる主要ターゲット層を想定して、さらに第2、第3の候補となるターゲット層を想定し、展開していく方法もあります。

この税理士の例であれば、ホームページなどに「他業種への展開事例」を掲載しておくのです。たとえばアパレル販売店から問合せがあったときには、飲食店以外でもコンサルティング実績があること、飲食店と共通する成功要因を水平展開できることを伝えればよいのです。

このように核となる主要ターゲット層を中心に、周辺の層に「徐々に広げていく」仕組みをつくったうえで、中心になるターゲット層から拡大をしていけば、「絞るとほかのお客様に買ってもらえなくなる」という心配は無用だとわかるでしょう。

「ターゲット」を明確にすればビジネスを展開しやすくなる

ターゲットを明確にすることは、ビジネスを展開させていく基本となるものです。ここでは、飲食店の新規出店を考えてみましょう。

以前、「大阪でお好み焼きのチェーンを経営しています。これまで商売をしたことがない街に進出するときには、どんな戦略がとれるでしょうか? 出店におすすめの場所はどこでしょうか?」という質問を受けました。

飲食店が土地勘のない地域で新規出店を考える際には、単純に分けると、人通りが多い繁華街とそうでない裏通りや郊外があります。

まず、人通りが多い繁華街から考えてみましょう。繁華街は家賃も高く、競合店が多いというデメリットはありますが、人通りの多さは大きなメリットです。

競合店が多いエリアに進出する場合の最大のポイントは、「誰に食べてもらいたいか」をはっきりさせることです。ターゲットを絞れば、どうすればそのターゲットに喜んでもらえるかを考え、メニューづくりや店構えに活かすことができるからです。

たとえば、原宿にいる女子高生に絞るとしましょう。クレープ感覚で食べ歩きがしやすいメニューをつくり、女子高生が立ち寄りたくなるようなかわいい店構えをつくる、凝った味つけよりもスピード感やかわいさを重視する、といった方法が考えられます。このように、想定顧客層が重要視する価値を前面に出すといいでしょう。

では、競合を避けてユニークな場所に店を出す場合にはどうすればいいでしょうか? その際にも、ターゲット設定がカギになります。

たとえば、「少しくらい高くてもいいから質のよいものを食べたい」「仲間とゆっくりしたい」という可処分所得が高い層にターゲットを設定し、駅から離れた落ち着いた場所で、食材にこだわった鉄板焼きのコース料理を出すという方法が考えられます。

このように、誰に食べてもらいたいか、ターゲット層を意識していれば、新規店の立地選び、メニューづくり、店づくりに活用することができます。

「クリティカルマス」を考える

新規出店の立地選びをする場合には、もちろん採算がとれるかどうかも重要です。

売上は、「顧客単価×購買数(客数)」で計算できます。その際に重要なのが、「必要な大多数(クリティカルマス)」を計算し、しっかりと頭に入れておくことです。クリティカルマスとは、あるプロダクトを爆発的に普及させるために最小限必要となる客数のことです。

飲食店でいえば、お店を成長軌道に乗せるために必要な売上を計算します。そして、その売上を上げるために必要となる客数を算出します。これがクリティカルマスと考えていいでしょう。この数字をしっかり理解しておくことです。

ビジネスを成長させるには、有限な経営資源を効率的に配分することです。そのためにも、ターゲットを設定し、そのターゲットにどうすれば価値を提供できるかを考えていくことが重要なのです。


2017年11月8日(水)、紀伊國屋書店新宿本店にて出版記念講演会開催決定!

講演タイトル

課題解決につながる「実践マーケティング」入門
~がんばっていても「なぜか売れない」と悩んでいるあなたへ~

■「誰に、何を、どう売るか」で整理すれば課題が見えてくる!

「自然に売れる仕組み」をつくるときのポイントは、「誰に(ターゲット設定)、何を(商品・サービス開発)、どう売るか(コミュニケーション戦略)」で整理すること。そうすれば、全体感を持って本当に解決すべき課題に取り組むことができます。

講演者の理央周氏は、アマゾンやマスターカードなどでマーケティング・マネジャーを務めたコンサルタント。実践的でわかりやすい説明に定評があります。今回の講演では、理央氏がよく相談や質問を受ける課題をピックアップして、解説します。

日時|2017年11月8日(水) 18:45開場 19:00開演
会場|紀伊國屋書店新宿本店8階 イベントスペース
参加方法|参加には整理券(先着50名)が必要です。
※お問い合わせ・お申込み方法は紀伊國屋書店様のホームページをご覧ください。

著者・講演者プロフィール

理央周(りおう めぐる)
マーケティングアイズ株式会社代表取締役
本名、児玉洋典。1962年生まれ、静岡大学人文学部経済学科卒業。大手自動車部品メーカー、フィリップモリスなどを経て、米国インディアナ大学にてMBA取得。アマゾン、マスターカードなどで、マーケティング・マネジャーを歴任。2010年に起業し翌年法人化。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年から2017年まで、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科で准教授として教鞭をとる。著書に、『「なぜか売れる」の公式』『8割捨てる!情報術』(ともに日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)などがある。