最後の発言には会場から大きな拍手が出たそうです。反発はある程度想定されたこととはいえ、この状況を放置していては改革はとん挫してしまいます。
ディスカッションの内容は、発言者を伏せたうえでリーダーたちに共有されました。リーダーたちは危機感を募らせます。「現場も疲弊し、変わりたいと思っているが、“どうせ無理だろう”という空気に支配されている。これではいけない」ディスカッションによって表に出てきた社員たちの本音を知り、リーダーたちは改革により積極的に取り組むようになります。
この部門では、プロジェクトの事務局によって四半期に一度行われる全社員の意識調査とは別に、毎月、独自の調査を行うことにしました。さらに、リーダーたちは積極的に現場に足を運び、直接スタッフたちとディスカッションを重ねるようになったのです。
「なぜ無理だと思うのか」を本音で語ることができるようになれば、改革は大きく前進するはず。このときが、リーダーたちが改革に対して本気になった瞬間でした。
そして会社は変わり始めた
社内調査はプロジェクトの浸透を物語ります。開始から一年後、調査項目に対するポジティブな回答が着実に増えていたのです。例えば、「職場では“限られた時間で成果を出す”という意識が浸透している」という設問に対して、プロジェクトの開始時は「強くそう思う」「そう思う」のポジティブな回答は45%に過ぎませんでしたが、1年を経過した頃には69%に増加しています。
また、調査では社員が自由なコメントを書き込める欄もあり、ポジティブな声が増えていきました。以下は直近の調査におけるコメントの一部です。
「時流にあった素晴らしい活動だと感じる」
「継続した取り組みに賛成/今後に期待している」
「改善を実感している」
最後に『プロジェクト・プライド』の、数字にあらわれた成果に触れておきましょう。
■女性の採用率
・22.7%(2015年)→30.5%(2016年)→38.7%(2017年)
・新入社員の女性比率は43%で数年前から倍増
■採用人数
・500人(2014年)→1000人(2015年)→1500人(2016年)
■残業時間
・平均1人1日1時間まで減少
・月60時間以上残業している社員の比率:開始前は8.9%→2017年4月 1%
■退職率
・開始前:13.6%→直近:6%
また特筆すべきは、働き方改革をすすめながらも、アクセンチュアの業績が2年で50%以上成長していることです。経営者にとって、働き方改革や時短への取り組みは、社員の反発や業績の下降というリスクを考えなければならない難しいチャレンジです。しかし、「悪いカルチャー」の放置はいずれ大きな問題を引き起こす可能性があります。そうなる前にアクセンチュアは改革を断行した。その結果社員の意識が変わり、生産性、収益性の向上につながったのです。
アクセンチュアの改革を詳細に解説した『アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」』は、同社の改革の軌跡をたどりながら、リーダーシップのあり方やチームマネジメント成功のノウハウが学べる、企業経営者、経営幹部、人事・マネジメント部門のビジネスパーソンにすすめたい1冊です。