新しい「話し言葉」には要注意!

言葉は、好むと好まざるとに関わらず時代とともに変化していきます。特に若者たちは新しい話し言葉をどんどん発明するので、大人(?)はなかなかついていけないのですが、気づいた時には影響されていて、「おれ的には正直アリだね」なんて会社のエライ人が言ったりします。

でも、新しい話し言葉の多くはすぐに消えて行きます。その中の僅かな表現だけが定着し、いずれ書き言葉としても受け入れられます。ですから、生まれたばかりの話し言葉を書き言葉として使うと、薄っぺらい文章になってしまいます。

たとえば、若手社員が提案書に次のように書いたら、読み手の上司はどう反応するでしょうか。

「検討した結果、私の中ではB案を提案するという形をとらせていただきます」

「何が『私の中』だ。私に中も外もあるものか。なぜ『提案します』とはっきり言えないのだ」

という上司のイライラする姿が目に浮かびます。

このような、読む人をきっとイラつかせるであろう「書き言葉にも使ってしまう話し言葉」はたくさんあります。以下に10の文例をあげるので、上司や同僚と円滑にコミュニケーションをとりたい人はチェックしてみてください。

(以下の内容は阿部紘久著『文章力を伸ばす』の内容の一部を再構成して掲載しています。文例も同書からの引用です)

意味のない飾り──「の方」「形」「中」「なります」

「このままではちょっと味気ないかな」「もうちょっと丁寧に書こう」。こんな気持ちのあらわれなのでしょう、文中に「飾り」を入れる人が少なくありませんが、ほとんどの場合意味がありません。話し言葉ではそれほど気にならなくても、書き言葉にそのまま使うのはとても不自然です。冗長にさえ感じられます。

1.「の方」

・今日は全国的に晴れて、気温の方が上がっています。
・少しでも負担の方を軽減できればと考えています。

2.「形」

・来年1月から営業開始というをとらせていただきます。

3.「中」

・私ので、「マナー」とは相手への思いやりから生ずる行動なのだと思う。

以上の3つは最近よく使われる言い回しですが、下線の部分は全部不要です。1.の「負担の方」は一見丁寧なようですが、何かの言い訳のようにも聞こえます。2.は「~営業を開始させていただきます」、3.は、「私は~なのだと思う」で十分言いたいことを伝えることができます。

4.「なります」

次は、実際にあった「口座振替依頼書の記入要綱」です。ちょっと長めの文章ですがお付き合いください。

・振込口座は、原則として本人が講座名義人になっているものとなります。委任状には住所・氏名・押印が必要になります。記載に不備がある場合にはこちらからご返送し、ご修正いただくことになります。ゆうちょ銀行の口座番号は7ケタの数字が入ることになります。振り込み手続き終了まで、約3週間が必要となります