2.基本は時系列
【文例2】
今はもう辞めてしまったが、ボストンへ短期留学する前、私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復一時間かけて通い続けた。
時系列を無視して思いついた順番に書いてしまうと、読み手が混乱します。基本は時間を追って順に書きます。
【改善案】
私はこの英会話教室に小学生の頃から通っていた。高校生の時、引越しをしたのでこの教室が遠くなってしまったが、それでも電車で往復一時間かけて通い続けた。大学入学後も、ボストンへ短期留学する前までずっと通っていた。
(62ページ)
3.曖昧接続を避ける
【文例3】
サンゴの天敵であるオニヒトデのトゲには毒があり、慎重に駆除作業を進めます。
因果関係がはっきりしている文章は読みやすいですが、それを曖昧に書いてしまう人がいます。文例3は読点の前後の内容が因果関係ではなく単なる併記のように感じられるため、明快さを欠いています。
原因と結果の関係はストレートに書いたほうが、言いたいことがはっきり伝わります。
(74ページ)
【改善案】
サンゴの天敵であるオニヒトデのトゲには毒があるので、慎重に駆除作業を進めます。
共感が得られるように書く
自分の感情をわかってほしい、と思うあまりに、強調表現や凝った表現を使い過ぎると、読み手は押し付けがましさを感じて共感してくれません。事実に淡々と語らせた方がかえって読み手の心を動かします。
3つの文例を見ていきましょう。
1.強調語を使い過ぎない
【文例4】
この経験から、自分に目標と強い意志があれば、どんな難しいことでも必ず達成できるということを学びました。
就活生の自己PR文でしょうか。自分を売り込みたい気持ちはわかりますが、「どんな難しいことでも必ず達成できる」は誇張でしょう。
阿部さんが見たある学生の「志望動機」には、「極める」「猛勉強」「心から」「涙が出そうに」「必ずと言っていいほど」「感激」などの強調語が詰め込まれていたそうです。逆効果ですね。
【改善案】
この経験から、自分に目標と強い意志があれば、難しいことでも達成できるということを学びました。
(156ページ)
2.凝った表現は避ける
【文例5】
高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動している自分がいた。
「自分がいた」「自分の中で」といった表現を使う人が増えていますが、ちょっと思わせぶりで格好つけているな、と感じる読み手も多いので気をつけましょう。
【改善案】
高校野球を小さい頃からテレビで見ていた。そして、そのプレーにいつも感動していた。
(157ページ)
3.自分のことも、事実に淡々と語らせる
【文例6】
私は高い想像力を持っています。自分が経験したことのないことでも自分に置き換えて想像をすることができるので、人の気持ちになって考え、その気持ちを理解することができます。
これもある人が書いた自己PR文ですが、このような、手放しで自分を礼賛する文章は共感されません。普段の人間関係と同じで、やや控えめで謙虚さが見える文章の方が好感を持たれるでしょう。
【改善案】
私は相手の身になって感じたり考えたりする想像力を磨こうと、いつも心がけています。
(161ページ)
阿部さんは『文章力を伸ばす』の序章において、「書く力は、考える力そのものです」と指摘しています。自分の考えを文章で相手に伝えるためには、考えていることを誰にでもわかるように組み立てて、共感が得られるように表現することが求められます。したがって、文章力を磨くことは思考力を磨くことに他ならないわけです。
文章力は、社会人として、学生として、あるいは1 人の人間として、さまざまな可能性を広げてくれる能力なのです。
(序章より)
文章を書くことが好きな人も嫌いな人も、「書くこと」にもっとチャレンジして、文章力を磨いてみませんか?