photo by acworks/Photo AC
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ランニングは「嗜むもの」

──多くのランナーが続かずに挫折するのは、準備不足とのめり込み過ぎが理由ですか。

「ランニング命!」になってしまう人がもっとも危険ですね。何かを犠牲にしてしまうと、続けることが難しくなります。

長く続けられる人は、無理のないプランで「ランニングを嗜む人」です。そんな人は例外なく仕事もできますね。できる人は、仕事のスケジュールも、アクシデントが起こっても対処できるように余裕をもって組みますよね。トレーニングの計画にも同じことが言えます。

──なるほど。それでは「働くランナー」たちが「ランニング命!」に陥らないように、アドバイスをお願いします。

1.仕事や家庭を犠牲にしない

まず伝えたいのは、「仕事や家庭を犠牲にしない」ということです。

仕事ができるランナーは、たとえばレースの当日に、どうしても自分が行かなければならない急な出張が入ったとしたら、たとえどんなに準備が万全で「自己ベスト更新間違いなし」だとしても、きっぱりと出場をあきらめます。そして出場できなかったことで悶々としない。

当日に子どもの具合が悪くなったとしても同じです。ランニングよりも家庭や子どものほうが大事ですから。無理やり出場して「サブフォー(フルマラソンを4時間以内で完走すること)」を達成したからといって、奥さんは喜びませんよね。子どもが元気で、夫の稼ぎが上がるほうがいいに決まってます(笑)。

2.タイムに固執しない

──たしかに……。でもレベルが上がってくるとどうしても記録が気になってくるのではないでしょうか。

2つめのアドバイスはまさにそこで、「サブフォー」や「サブスリー」に固執しないことです。

プロのランナーじゃないので、速いことが素晴らしいことじゃないんです。大事なのは、速く走ろうと遅く走ろうと、ランニングで何かを得て、人生を豊かにすることです。記録を追うことを否定はしませんが、先ほども言った「走る目的」にリンクしていないと意味がありません。

僕はよく、記録達成に向けて殺気立っている人にこう話します。「あなたがサブスリーやったって世の中は良くなりません。それを肝に銘じてやってください」って。「むしろあなたがサブスリーやると、会社や家庭が壊れたりする可能性があるから」とも。

──サブスリーはそれほど特別だということですか?

いえ、逆です。メディアが助長している部分もあって、一般のランナーの方はサブスリーにあこがれすぎています。でも、マラソンの世界では特別な記録じゃない。何かを犠牲にしてまで追い求めるものではありませんよ。

ただし、新刊の『仕事ができる人の「走り方」』で紹介した、「サブスリーを達成することで自分に自信が持てた」という方や、「ウルトラマラソン(100km)を走りきることによって、普段いかに自分にリミッターをかけていたがわかった」という方のように、記録に対する目標が、「気づき」や内面の変化にリンクしているならまったく問題ない。本物だと思います。

3.好きなものを我慢しない

──お酒や美味しいものはセーブしたほうがいいのでしょうか?

「我慢しているうちは二流です」とも僕はよく言うんです。走っていると、自然とお酒の量は減ってきますよ。「カラダを良くする」ということの優先順位が上がりますから。「走っているからビールを我慢しよう」と言っているうちはダメです。