「数字」が読めると本当に儲かるんですか?
「なぜ、うちの会社は赤字体質から抜けられないのか」
「安易な値引きをするから、社員を馬車馬のように働かせてしまうブラック化が進むのではないか?」
こうした疑問はおそらく「会計・経理の知識がない」という答えにほとんど集約されます。というのも、「会計や経理の知識を持っていない」ということは「会社の現状を理解する術を持っていない」ということを意味するからです。
楽天市場で人気の花屋を営む古屋悟司さんは、かつてこのことを痛切に感じたそうです。とにかく売上を上げることを目標とし、年商が大台の1億円を突破したにも関わらず、赤字体質による資金不足に不安を感じ続ける日々。
そうして倒産寸前まで追い詰められたときに出会ったのが、いくら売れば儲かるかがわかる「限界利益」や会社の現状を映す鏡ともいえる「限界利益率」といった「会計」の知識でした。その「数字の読み方」を授けてくれたスゴ腕の税理士さんのおかげで、経営のV字回復に成功し、以降黒字続きだそうです。
その古屋さんの実話を元にした書籍『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』から、数字オンチでもわかる「儲かる会計」の基本をみてみましょう。
いくら売れば儲かるのか?「限界利益」がカギに
ビジネスにとって、自分たちの活動の成果たるお金――つまり売上はとても重要です。しかし、利益が残らなければ、会社を存続させることはできません。もし商品が飛ぶように売れていたとしても、利益がなければ、まともな経営とはいえないのです。
利益は、大きく売上総利益(粗利)、純利益、営業利益、経常利益、税引き前当期純利益、そして限界利益の6つに分けることができ、今回のキーワードとなるのは「限界利益」です。
「限界利益」とは商品の売上を一単位増やす毎に増加する利益をいいます。「他の利益は知っていても、この言葉だけは聞き慣れない」という人は意外と多く、もし「初めて知った」という人がいたら、ぜひ覚えておいてください。この「限界利益」は、会社や商品の利益の本質を見ることにつながる、とても大切な数字なのです。
限界利益と限界利益率から分かる、会社の「儲けパワー」とは
「限界利益」の解説に入る前に、まず会社から出ていくお金である、「費用」について整理しましょう。
会社でつかう費用は大きく2つに分けられます。
1つは「固定費」、もう1つは「変動費」です。
「固定費」は商品やサービスが売れても売れなくてもかかる費用のことで、例えばオフィスの家賃、人件費、公共料金などです。一方の「変動費」は売れば売るほどかかる費用のことで、たとえば材料費、電気代、外注費などがそれにあたります。
イメージでいえば、固定費はなにもしなくてもお金がでていく、すねかじりの『ニートな費用』、変動費は売れば売るほどつきまとってくる、『ストーカー費用』だと、古屋さんはいいます。
限界利益は額と率で把握し、額は売上から変動費を引くことで求められます。つまり、売上における限界利益額が、なにもしなくてもでていく固定費を賄うことができれば黒字ということになるのです。
この、限界利益額をつかって求められるのが限界利益率で、古屋さんはズバリ会社の「儲けパワー」と呼んでいます。限界利益額の売上に対する比率が、限界利益率です。
限界利益率は売上高の増加分のうち、どれだけの利益に結びつくかをあらわしたもの。競争状況などに違いがなく、同じような売上を得られる商品をもつ場合、限界利益率の高い製品の営業に力を入れると利益が最も多くなるという指標です。
求め方は以下の通りです。
この2つの数字分かれば、もう大丈夫。
では具体的に会社の儲けパワーをシミュレーションしていきましょう。