装飾技法(ビブラートやコブシ)はため息で

カラオケの歌い出しで十分な声量が出ていれば、「お、いい声だ」「よく響くね」などとほめられるでしょう。しかし、そのまま同じ調子で終わってしまうと「いい声なのになあ」「なんだか一本調子だね」と、とたんにマイナス評価に。そうならないためには、「ビブラート」を練習しましょう。

歌が上手な人は、フレーズの最後の部分(「歌い尻」と言います)に自然にビブラートをかけています。そう、ビブラートは歌い尻にかけるのが効果的なのです。

武田氏は、初心者には「ナビキ型」と呼ばれるビブラートをマスターすることをすすめています。かの浜崎あゆみさんのビブラートが、このスタイルに近いそうです。

簡単な練習法を紹介しましょう。飲み物をこぼしてしまったときなど、思わず「あ~あ」と、ため息交じりに声を出してしまいますね。この感じの発声に、さらに「あ」を重ねます。

「あ~あ~あ」「あ~あ~あ~あ~あ」

慣れて来たら「あ」と「あ」の感覚を縮めてスピードを上げます。すると、あれ、いつの間にか「ビブラート」になっていませんか!

標準的なビブラートは、1秒に約6回の「あ」が目安だそうですが、このスピードでできるようになったとき、「わたし歌うまい?」と感じることでしょう。

ちなみに、ビブラートのほかにもシャクリやコブシなど、カラオケの加点項目にもある装飾テクニックがありますが、これらは喉の使い方的にはいわば兄弟のような関係にあるので、1つが上手くなると他も上達する可能性が高いそうです。たくさん加点されるようになったら、練習するモチベーションも上がりますね。

動画ではいろいろな装飾テクニックが紹介されていますので、参考にしてみてください。

音程をよくするには裏声を出す

さて、いよいよ音程をよくする、つまり音痴をなおす方法です。同書では2つのトレーニングが紹介されています。

まずは、裏声を出すトレーニングです。なぜ裏声かというと、裏声を出すときには声帯を伸ばす筋肉を使いますが、この筋肉には音程を調節する機能があるからです。この筋肉を活性化させれば、音痴がなおるというわけです。

裏声を出すときには次の3つのことを守ります。

・ミッキーマウスのような声を「ウ」の母音で出す
・息漏れをたくさんさせる
・ビブラートをかけない

なかなか出せない人は、動画を参照してください。

裏声を出す筋肉を動かすと、喉の筋肉全体のストレッチにもなり、柔軟性が出てきます。音程調節機能の強化とあわせて一石何鳥にもなるので、普段からやっておくとよいでしょう。

音痴をなおす2つめのトレーニングは、発声そのものから少し離れた一種のイメージトレーニングで、「メンタルコンセプト」と呼ばれるものです。具体的には以下のような方法で行います。

まず目を閉じて、身近な人の声を想像します。それもできるだけはっきりと、声が鳴るところをイメージします。

次に、自分の好きな歌手の声をイメージします。曲を脳内で再生するような感覚で、細部まではっきりと再生します。もし曖昧なところがあれば、実際に何度も繰り返し聴き直し、イメージを明確にしましょう。慣れてきたら、極端に声色の違う歌手を選び、毎日1人ずつ脳内再生するとさらに効果的です。


さて、以上のトレーニングで“カラオケ好き”になったら、ぜひ自分の「声」そのものに目を向けてみてはいかがでしょう。「いい声」へのあこがれは、誰もが持つもの。また、歌に限らず、スピーチやあいさつで人を魅了できたら、自分に自信が持てるようにもなります。

武田氏が紹介する「フースラーメソード」は、科学的理論に裏打ちされた、人間が本来持つ「声」の力を解き放つボイストレーニング法です。同書で、よい声とはどういうものか、そのためにどんなトレーニングが効果的なのかといったボイストレーニングの一端に触れて、あなたの「声」に磨きをかけてみてください。