話すことは10秒で区切る! 積み上げ式「成功体験」メソッド

厳しいことを言いますが、もし話しはじめて10秒でつまずいているならば、人前で1分間話すことなどできないでしょう。

気象キャスターとして活躍している荒木さんが、翌日の天気を伝えるためにかかる時間はちょうど10秒です。

「全国的に晴れますが、沖縄では雨が降るでしょう。最高気温は、きょうと同じくらいですが、東京では3度ほど低くなりそうです」

最も必要な情報を、とにかく簡単な言葉だけで文章にしています。無駄が一切ありません。また、「3度」という数字があることで、どのくらい寒くなるかが実感できます。

荒木メソッドのキモは、分かりやすくメッセージをまとめた10秒のブロックを何個もつくっていき、その文章をつないでいくこと。

まずは、1つめのブロックをつかえずに話せるように練習する。それができたら、次の10秒に挑戦してみる。10秒にまとめて話せるという成功体験を積み上げていくことが、1分間話せることにつながっていくのです。

脳科学によれば、あがり症の最大の敵は過去の失敗体験。それを短い成功を体験しながら上書きしていくことが、克服のための最良の薬になります。

スピーチ最中に突然頭が真っ白に…! 本番中の対応法とは?

ただ、いくら準備をしても、本番中にいきなり「自分は今、何を話そうとしていたのだろう?」と頭が真っ白になるときはあるでしょう。

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『あがってうまく話せない人でも大丈夫 10秒で伝わる話し方』荒木真理子著

そんなときのための対策を教えましょう。

荒木さんが“究極のお助け術”としてあげているのが、「タイトル反復法」です。たとえば、テレビの速報ニュースでこんな言葉を聞いたことはないでしょうか。

「お伝えしていますように、『○○で●●』が起きました」
「くり返しお伝えします。『○○で●●』というニュースが入ってきました」

速報ニュースは基本的に情報が少ないことが多く、ニュースの予定時間が空いてしまうことがあります。その時間を埋めるためにも使われる手段がこの「タイトル反復法」です。

タイトルとは、言いかえれば「見出し」や「キャッチコピー」、「ヘッドライン」。たった一言で概要が分かってしまう力を持っており、なおかつメッセージの中でも最も印象に残る部分です。

実践では、あらかじめ自分の話すことにタイトルをつけておき、頭が真っ白になったときに以下のような形で使います。本書から引用しましょう。

「・・・そんな●●寺は、鎌倉時代に建てられた歴史あるお寺ですが、あじさいが植えられたのは、第二次世界大戦の後です(あれ、次はなんだっけ? どうしよう…)このようにお伝えしています『青空のようなブルーのあじさい』ですが……(メモを見る)人手が足りないなかでも心を癒す花を植えたい、と手入れが簡単なことで選ばれたものなんです」
(227ページより引用)

「タイトル反復法」は、言葉に詰まったときのリカバリーにとても役立ちます。

「このように『タイトル』ということを、ここまでお伝えしてきました」
「これまでのご説明で『タイトル』について、ご理解いただけましたか」

話している内容はタイトルになぞったものであるはず。だから、急に文章の途中に入れてもあまり違和感はありません。

言葉に詰まってしまっても、落ち着くための方策があれば、楽な気持ちでのぞめるはずです。これはすぐにでも使いたい、知っておいて損はないスキルですね。



短い言葉で端的に伝えるコツは、ビジネスにおいても、日常においても必要です。

人前で話すときにどうしてもあがってしまうという人は、本書の「10秒メソッド」を実践してみてはいかがでしょうか。キャスターならではの豊富な事例が詰まっており、テレビの向こう側で実践されているテクニックを知ることができます。

これで苦手なプレゼンやスピーチ、会議の発言も乗り越えられるはずです。