1個当たり100ドルの商品を1万個輸出するとき、為替レートが1ドル=120円のときは円建ての売上は1億2千万円、円高が進んで1ドル=100円になると、円建ての売上は1億円となり差引2000万の売上減となる。逆に1ドル=140円と円安になった場合は円建ての売上は1億4千万となり、売上高が伸びる。

ここで、国内には輸出産業・輸入産業・内需産業とさまざまな企業があるが、日経平均の構成銘柄は自動車やエレクトロニクスなど輸出産業に属するものが主流となっているため、個々の輸出企業のみならず日経平均も「円高=株安/円安=株高」となりがちである――

これは輸出産業にを取り上げての簡単に記述したものですので、輸入比率の高い企業は逆に「円高=輸入原材料のコスト減→業績・株価にとってプラスの効果」に、完全に国内で完結するサービスを提供するような内需関連銘柄は業績に対する為替の影響は少なくなります。

このほか業績に与える為替の影響として「想定レート」があります。一般的に、企業は来期の予算を今期中に決めます(例:3月決算の企業であれば、だいたい1~3月に来期の予算を決定)が、そのとき、為替が業績に大きな影響を及ぼす企業は、想定レートを定めたうえで見通しを立てます。

たとえば、ある輸出中心の企業が期首に1ドル=110円で想定していたとします。しかし、実際には100円程度で推移しそうな場合、その企業の業績も当初の想定してたときより悪化すると予測できるため、株価が業績悪化を織り込んで下げたり、その企業が中間決算発表時に業績の下方修正を一緒に出したりします。

このような想定レートと実際の為替の動きを比べることで、決算の数字が上振れ・下振れする可能性が考慮され、株価が動くことになります。

為替と金利の関係

残った「金利と為替の関係」もみてみましょう。本来、金利の変動は短期的な資本移動を促すものです。「金利が高い」とは「利回りがいい」と同義なのである二つの通貨間で金利差があった場合、金利が低い通貨は売られ、金利が高い通貨は買われます

また、金利差が大きいほど利回りの差も大きくなるので、一方の国が利上げ(利下げ)を行った場合、為替レートは大きく動きます。基本的には米金利のほうが高いので「金利差拡大=円安ドル高/金利差縮小=円高ドル安」ということができます本記事冒頭でも挙げた、昨年12月の米FRB(連邦準備制度)による利上げは、円安ドル高の動きを呼び起こしました(それにつられて日経平均も上昇)。

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日米両国の2年物国債利回りとドル円レートの関係(『本当にわかる株式相場』 土屋敦子著 P.142より)

金利は政策によって動く要素が大きいため、プロの投資家や一部のFXトレーダーもその動向に着目しています。とりわけ、2年物国債(償還期限が2年と定められている国債)の利回り比較は、金融政策に対する市場の見方が色濃く表れるため、指標として重宝されています。上図は「2年物米国債と2年物日本国債の利回りの差」と為替の動きを重ね合わせたグラフですが、非常によく似た動きをしていることがわかると思います。

ケーススタディ「2017年2月3日、その時何が起こった?」

では、これらの基礎知識を踏まえて、2月3日のお昼を挟んで発生した「イールドカーブ・コントロールと日経平均急落&急騰」を読み解いてみましょう。