しかし、この歓迎ムードが一巡する2017年春先には、金融市場でもイベントリスクが待ち構えています。
第一に、欧州で予定されている一連の選挙が、市場の波乱要因になり得るでしょう。3月にはオランダの総選挙、4~5月にはフランスの大統領選、ひょっとすると、2018年に予定されているイタリアの総選挙が春ごろに前倒しで行われるかもしれませんし、秋にはドイツの連邦議会選挙も予定されています。
これまでであればどの選挙も、おおむね政権与党が優位といえましたが、2016年の英国の国民投票やトランプ旋風をみるかぎり、世論調査だけではわからない「想定外」の結果となるかもしれません。「反エスタブリッシュメント」という言葉が2016年にはあちこちで聞かれましたが、要は「反体制、反特権階級」の流れがグローバルに勢いづいているのです。
とくにフランスについては、現職のオランド大統領が、支持率低下により既に不出馬を表明しています。仮に極右政党が躍進するなどしたら、将来、フランスが欧州連合(EU)を離脱する可能性も浮上しかねません。フランスはドイツとともにEUの要として重要な役割を果たしてきたため、そのフランスで離脱の是非を問う国民投票が将来実施される可能性が浮上するだけでも、市場は大きなショックに見舞われる可能性があるといえます。
米国の利上げは本当に3回できるのか
加えて、米国の利上げペースも重要なカギを握っています。2016年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2017年の利上げ予測は、17名の委員による中央値で「トータル3回」が予想されていました。しかし、仮に足元のドル高傾向がさらに進んだ場合は物価に下落圧力がかかり、景気にもブレーキとなることから、利上げのペースは遅くなる可能性もあります。
実際にトランプ政権の財政政策が実施されるのは早くて2017年の秋以降であること、2017年は政治的なイベントリスクが多く、市場のボラティリティー(変動率)が高まる可能性が高いこと、などを踏まえれば、利上げは2回程度で精いっぱいではないかとみています。12月のFOMCによって市場の利上げ期待が高まっているだけに、利上げの見送りは急速なドル安や株安につながる可能性もあるため注意が必要です。
また、トランプ氏の根底に流れる保護主義的な思想が台頭するリスクが挙げられます。
2017年は欧米で政治的な不透明感が強く、市場のボラティリティー(変動率)も高まりそうですから、何かのきっかけで急速に円高が進行した場合、そこで日銀が追加緩和をする、あるいは日本政府が介入を決定することは、極めて困難といえそうです。もし実施した場合には、トランプ氏が「日本は為替操作をしている」などと、通貨政策において批判を強める可能性はあるでしょう。追加緩和するにしても、手段は極めて限られます。
日銀はマイナス金利の深ぼりや、10年債利回りの目標値引き下げ、量的緩和を追加緩和の手段として持っていますが、マイナス金利を掘り下げれば金融関連株の下落につながりやすいことは、2016年1月以降の相場で既に実証済みです。
少ないチョイスのなかでどのようにして次の一手を打つのか。仮に株安・円高となった場合は極めて難しい判断が求められます。これらのリスクによって、2017年はドル円が5から10円程度、突然ストンと下落する可能性には常に警戒が必要でしょう。
ただ、前述したとおり2017年秋には、額の大小はさておき、トランプ新政権による財政政策が打たれる可能性は高く、年後半にかけては米国の景気拡大、ドル高の進行が見込まれます。春ごろいったん110円付近まで調整があったとしても、年末は再び115~117円程度までドル円が持ち直している可能性はあるとみています。