“評価基準”を明確にすることが、必要
また、「好き嫌い」が横行する状態だと“評価”に対する解釈のすれ違いも起きがちです。
上司と部下の間で評価に対してすれ違いがおきてしまうのは、「必要な成果とは何か」ということを、互いが共有していないことが原因です。評価に対するズレは、成果に対する考え方のズレとほぼ同義といえます。
たとえば、現在私はメディアの運営を行っています。記事を書く部下の評価を行うこともありますが、その場合は評価基準を定量的に、あるいはわかり易い言葉で定性的に伝えてから行います。
成果をあげれば評価をされると、誰もが当たり前のように感じていますが、そもそもその成果とは何かということを上司と部下であらためて擦り合わせてみると、認識のズレに気づくでしょう。
評価の基準は数字だろうという人もいれば、行動の方も評価しましょうという上司もいる。さらにスピード感も大事、という人もいます。
上司は「会社が望んでいる成果をきちんと理解し、それを達成するためにはどうすればいいのか」を考え、行動することを部下に望んでいるのです。
「分かり合う」のは不可能だが、成果を共有することはできる
ここまで上司と部下の間の好き嫌いについて書いてきましたが、本質的なメッセージは「好き嫌いなど気にするな」に尽きます。
なぜなら本質的に「上司と部下は分かり合えない」ものだからです。
上司が部下の考えを聞くために一緒に飲みに行ったり、部下が上司の気に入るような振る舞いを心がけたりといった努力で、「わかったような気」になることはできるかもしれません。
しかし、立場が違う以上、本質的に「分かり合う」ことは不可能です。正直なところ、そんな不可能ともいえる「分かり合う」ための努力は、ほとんど徒労に終わります。
だからといってお互いが歩み寄れないわけではありません。
たとえば、新しい企画や顧客開拓の拡大など、お互いが1つの成果を共有しようとすることは、同じ会社に所属している以上、決して不可能なことではありません。つまり、「成果」という1つの軸を共有することが好き嫌いを超え、上司と部下のすれ違いを減らすことを可能にするのです。
上司と部下それぞれの価値観を無理に揃えるのではなく、お互いが1つの成果に向けて「共存」する。これが、上司と部下のすれ違いをなくすための、現実的な形といえるのではないでしょうか。
安達裕哉(あだち ゆうや)
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。
1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事。在職中、社内ベンチャーであるトーマツイノベーション株式会社の立ち上げに参画。東京支社長、大阪支社長を歴任。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。また、セミナーは、のべ500回以上行う。その後、起業。自身の運営するブログBooks&Appsは読者100万人、月間PV数150万にのぼり、世界最大級のインターネット新聞「ハフィントン・ポスト」のブロガーでもある。
主な著書に、『「仕事ができるやつ」になる最短の道』(日本実業出版社)がある。
知と知をつなぐブログ Books&Apps
http://blog.tinect.jp/