連載(全6回)「仏の上司・鬼の上司 彼らが教えてくれたこと」では、12年間経営コンサルティングに従事し、8000人以上のビジネスパーソンの生の声を聞いてきた安達裕哉さんからお聞きした、上司から学んだ「働く」ということについてのヒントを紹介します。
第6回は、日頃は聞きづらい、上司の部下に対するホンネを聞いてみました。
上司が共通してもっている、部下への思いとはどういったものなのでしょうか?
(文責:日本実業出版社)
部下は上司から嫌われることを恐れている
上司と部下。最近では「サーバント・リーダーシップ∗」という言葉があるように、上司が権威を強調する会社も減りつつあり、その関係は、親しい友達のようにたとえられることもあります。
ですが、一見そう見えてもやはり上司と部下は交わらないもの。部下は常に、上司に嫌われることを極端に恐れます。なぜならば、その関係は対等ではなく、部下の生殺与奪を上司が握っているからです。
たとえば、ビジネスパーソンにとって基本といえる、上司への業務の報告や相談。部下にとっては思った以上に勇気がいることのようです。
「的外れなことを相談したら、呆れられるのではないか」「忙しそうだから、声をかけない方が良いかな」と恐れるあまり、言葉を飲み込んでしまう部下の人は少なくありません。
しかしそれは、部下をマネジメントする必要のある上司から見たら、「なんできちんと報告しないんだ!」とイライラする原因になります。また、自分に対する会社からの評価を考えると、「部下から相談してもらえない上司」という立場にあることはとても不安なものです。
そのため、「好き嫌い」という感情が先行しすぎる上司と部下の関係は、徐々にギクシャクしていきます。
∗ ロバート・グリーンリーフ(1904~1990)が1970年に提唱したリーダーシップ哲学。上司が部下に強く指示・命令して動かすような、いわゆる支配型リーダーシップの反対で、目標に向かって邁進する部下や仲間を支援し、導く形をとる。
上司が最も気にすべきは、部下が“成果”を出すこと
そもそも、本質的に上司にとって、部下は「好き」や「嫌い」という感情で扱う対象ではありません。
しかし、もちろん中には好き嫌いで評価を下す人も大勢います。人間として感情に流されるのは仕方のない部分はありますが、上司が上司である理由は、部門で成果をあげるためです。
たとえば何を相談しても「自分で考えろよ」とだけ返してくるなど、部下にしてみれば「嫌われているのかな」と不安になることが多い上司のもとでは、徐々に部下のパフォーマンスが落ちてしまいます。
これは双方にとって望ましいことではありません。さらに部下の仕事に不備があれば、責任をとるのは上司です。部下のパフォーマンスが低い部署は上司も管理能力を疑われますから、結局は感情に流されず、双方がきちんと仕事で成果を出すことが、上司にとっても一番良いことなのです。
上司も部下も、仕事でもっとも重視しなければならないのは成果を出すかどうかということだけです。