朝から仕事に追われPCと「にらめっこ」しているうちに、気がついたら1日中デスクに座りっぱなしで、首や肩がガチガチに凝り固まっていた、という経験はありませんか?
じつは数年前から、「座り過ぎ」は健康に悪影響を及ぼす危険な行為である、ということがさまざまな研究で明らかになってきました。しかも別の調査によると、日本人の座位時間は世界最長なのです!
「座り過ぎ」は身体にどんな悪影響があるのか。どうすれば防ぐことができるのか。ここでは、育児支援から生活習慣病の改善、ダイエット指導など、これまでに3万人の人たちの健康増進に関わり、NPO法人予防医療推進協会の理事長も務める佐々木さゆり氏の著書『座りっぱなしがあなたの健康を蝕む 本当は怖いデスクワーク』(以下同書)から、そのポイントを抽出してみましょう。
「座り過ぎ世界一」は日本人!?
「1日の座位時間が8~11時間の場合、1日4時間未満の場合に比べて死亡リスクが15%上昇。座位時間が11時間を超えるとリスクは40%上昇する」
これは医学誌「Archives of Internal Medicine」2012年3月25日号に掲載された、オーストラリアのシドニー大学による調査結果です。また、イギリスやアメリカでも、「座り過ぎ」によって死亡リスクが高まると同時に、肥満や糖尿病、脳血管疾患や乳がんなどを引き起こす要因になっていると指摘されています。
しかも、別の調査によると、私たち日本人の1日の平均座位時間は8~9時間で、世界最長なのだそうです!
機会を見て、1日のうちに座っている時間を計ってみることをおすすめします。食事や通勤、デスクワーク、自宅でくつろぐ時間などを足してみると、睡眠時間よりも長いのではないでしょうか。会社にいるほとんどの時間をデスクで過ごしていて、しかも残業が多い人などは、それだけで11時間を超えているかもしれません。
世界で一番「座り過ぎリスク」にさらされているのは、日本人デスクワーカーなのです。健康を維持するために、すぐにでも対策をとったほうがよさそうです。
まずは、座り過ぎにどんな悪影響があるのかを把握することから始めましょう。
1.「猫背」──便秘や痔、感染症のリスクが増える
長時間デスクに座っていると、知らず知らずのうちに背中の力が抜けて丸くなります。それに気づかずにいると、立っているときでも丸まってきて、周囲の人にずいぶんと老けた印象を与えてしまいます。
見た目だけではありません。猫背がクセになると、椎間板に大きな負担がかかったり、胃腸や肺などの内臓や背骨周辺の神経が圧迫されるなどして、ヘルニアや肩甲骨周辺の痛み、便秘や痔などの原因になります。
また、猫背になると顎が前に突き出やすくなります。この状態は口呼吸を誘発し、口の中の乾燥や口臭の原因になり、ウィルスにも感染しやすくなります。
たかが猫背とあなどってはいけないのです。
2.「ストレートネック」──上を見上げるのが辛い
最近メディアで取り上げられることも多い「ストレートネック」。デスクワーク中に背筋を伸ばそうとしたとき、自然に後頭部を手で支えている人はその疑いが濃厚です。顔が上を向くと違和感や痛みを感じるので、無意識にそれを防いでいるのです。
正常な首の骨は約30度前弯(ぜんわん)しています。この前弯がクッションの役割をして頭の重さや衝撃を吸収しているのですが、それがまっすぐな状態になるのがストレートネックで、頸椎への負担が大きくなります。