一方、その当時はヨーロッパの片田舎だったイギリスは、ドーバー海峡を隔ててとなりあっていたオランダなどと貿易を行い、その影響を強く受けていきます。そして「ピューリタン革命」「名誉革命」などの争乱を経て、1700年代には人々の自由を尊重する「近代社会」が生まれました。その最先端の文化から「産業革命」が起こり、1900年代初頭までは「大英帝国」が繁栄の中心でした(⑩)。
アメリカの時代
西ヨーロッパ諸国が世界を圧倒していた時代は、アメリカ合衆国の台頭によって終わりを告げます(⑪)。アメリカはヨーロッパのとなりじゃない、と思うかもしれませんが、アメリカの中心である東海岸は、大西洋をはさんでイギリスの「となり」にあります。
イギリスと海の交通路でつながっていたアメリカは、産業革命をバージョンアップさせ、工業生産で他を圧倒し発展していきました。そして現在まで、その覇権は続いています。
ほかにも、中国のような重要な国もありますが、世界史の繁栄の中心でみた場合には、西アジアと西ヨーロッパが最重要地域であることはまちがいありません。
繁栄は永久には続かない
このような「繁栄の中心の移り変わり」という視点で世界史の全体像を見ていくと、秋田さんのいう「新しい中心は繁栄の外側、周辺で生まれる」ということがよくわかります。そして古い中心は、新しい中心の勢いに飲み込まれるように衰退していくのです。
また、この視点は、私たちに大事なことを教えてくれます。それは「どれほど繁栄していたとしてもそれは永久に続くことはない」ということです。おそらく今後の世界では、アメリカの繁栄も次第に衰えていくのでしょう。すでにその兆しは見えているようにも感じられます。
そしてこのことは文明や国家だけでなく、企業や組織にも当てはまることではないでしょうか。成功を収めた大企業が時代の変化に取り残されて衰退する、いわゆる「大企業病」は、私たちがよく見かけるものです。
大企業でなくても、小さな組織、あるいは個人レベルでも、過去の成功体験にとらわれて新しいものを受けつけなくなることはあります。それがいずれは衰退を生むことも、世界史は教えてくれます。
大人が世界史を学ぶ意味は、こんなところにあるのかもしれません。