日本のトップである内閣総理大臣は国会議員の中からの指名を経て就任しますので、当然ながら国会議員としての資格をもちます。これはすなわち、立法部と行政部が半分一体化しているようなもので、三権分立とはいいながらも完全に独立しているとはいいがたい側面があります。
一方、アメリカの大統領制は国民の選挙によって選出されるため、必ずしも連邦議員としての資格を持つ必要はありません。余談ながら、今回勝利したトランプ氏は上下院議員はおろか、政府職員など公職としての活動経験すらないといわれています(党員としての活動経験はあり)。こうしたことからも、立法部と行政部が明確に分かれていることがわかるでしょう。
明確に分かれている以上、アメリカの立法機能は連邦議会が有しており、法案は議会で作成されます。もしその内容が大統領の意に沿わないものであった場合、拒否権を発動することで成立阻止を試みることができますが、その後、議会の3分の2以上の多数決によって法案が再可決したときは、拒否権は無効とされます。こうすることで、大統領による専制化を防ぐようになっています。
それ以外の大統領の権限には「行政部の長・国家元首・軍部最高司令官・外交の最高責任者」などがあります。大統領は行政部の長として国務省・財務省などから航空宇宙局(NASA)にいたるまで、すべての責務を1人で負うことになりますが、現実的にそれは厳しいため「大統領府」が設置されています。そこで、大統領補佐官やホワイトハウス事務局をはじめとする各種機関のスタッフが、その責務の一翼を担っています。
そのほかの権限については「軍部最高司令官として議会の了承なく海外派兵できる(48時間以内に議会への事後報告は必要)」「外交の最高責任者として、上院の承認なしに行政協定(外交条約と同等の効力をもつ)を結べたり、国交断絶権を有する」などがあります。
以上、「アメリカ大統領選挙と、大統領が有する権限」について簡単に解説をしてきました。世界の大国として多大な影響力をもつアメリカの頂点に立つ大統領に関する知識は、教養としても非常に有用なものです。本記事では厳密な定義などはある程度簡略化していますが、興味のある方は、より深く調べてみてはいかがでしょうか。