一度発症すると「次はいつ痛みがくるのか」と怯えながら暮らすことになる恐怖の症状「腰痛」。職業や年代・性別を問わずあらゆる人がなる可能性がありますが、とりわけ介護や医療に携わる「保健衛生業」の従事者に多くみられる症状です(参考:厚労省・東京労働局「平成27年グラフで見る東京の労働安全衛生」(PDF))
そこで今回は「介護に携わる理学療法士が心がけている腰痛防止術」を紹介。日常生活はもちろん、家族の急な病気や怪我で要介護者を抱えることになったときにも非常に役立つテクニックです。ぜひ、この機会に覚えておきましょう。
※本記事は『これから介護を始める人が知っておきたい介助術』(田中義行著、以下本書と表記)の一部をもとに構成されています。一口に「腰痛」といっても「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」、「腰椎骨折」「脊柱管狭窄症」などさまざまな症状があります。もちろん、症状によって原因や対策は異なるのですが、ここでは介護や日常生活の無理な姿勢・動作が原因で起こりやすい、一般的な意味での「腰痛」について触れます。
脊椎の構造
まず、基本知識として人間の体の中心を通る脊椎の構造からみていきましょう。脊椎はまっすぐではなくカーブを繰り返しており、首(頸椎)と腰(腰椎)のあたりは前方に、胸から腹にかけて(胸椎)のあたりは、後ろに曲がっています。
ここで「要介護者をベッドから起こす」などの持ち上げる・抱え上げる動作をしたとき、腰椎の前弯がより強く曲がってしまうことがあり、こうした負荷によって腰痛が発生することがあります。
こうしたケースでの腰痛を防ぐには、コルセットや革ベルトを使います。これらは腰を締め付けるように巻くことで圧力をかけ、腰椎が過度に曲がるのを防いでくれます。また、日ごろから腹筋を鍛えたり、腰痛体操による背部・下肢のストレッチを行うのも、予防に効果があります。