「夏休みの宿題」に取りかかりづらい理由とは?
本題に入りましょう。「チャンク」とは塊のことです。したがってチャンクダウンとは、「塊を小さくする」の意です。もう1つ、「曖昧なものを具体化、明確化する」という意味もあります。
「夏休みの宿題」という塊は、サイズが大きくてしかも抽象的です。このままではどこから手を付けていいか見当がつかずに動けないから、つい先延ばしにしてしまうわけです。ですからこれを、動き出しやすくするためにできるだけ小さく、牛1頭にたとえると、まずブロックに、そして食べやすいサイコロステーキサイズにまで小さく切り分けて、実体をはっきりさせる。これがチャンクダウンです。
大きな塊を小さくすれば取りかかりやすい
まず、夏休みの宿題を少し大きめのブロックに分けると、「ドリル系」「日記」「読書感想文」「自由研究」となります。こうしてみると、「ドリル系」「日記」は毎日リズムよくこなしていく必要があることが明快にわかります。特に日記は、夏休みの最後に40日分思い出すのは相当苦労しますので、出来事だけでもメモしていきたいところです。
「読書感想文」「自由研究」の2つが、なかなか手を付けにくい難関です。あとで考えよう、と思っているうちに夏休みも残り少なくなり大いにあわてた、という思い出がある人も多いでしょう。しかしこの2つこそ、さらに小さくチャンクダウンすることによって、「どこから手を付ければいいか」をはっきりさせることができるものです。
「読書感想文」をチャンクダウンすると、「本を選ぶ」「読む」「書く」に分けることができます。このチャンクダウンによって、感想文を書くときにやらなければならない行為が具体的に見えてくるのです。
見えてくると、たとえば、読書が苦手な子どもは、「読む」と「書く」をできるだけ軽くしたいから、「本を選ぶ」ときに『坊ちゃん』のような文学作品ではなく、読みやすくて面白い冒険ものにしよう、などのように考えることができます。
でも、どの本が読みやすくて面白いのかがわからない。どうやって選ぼうかと迷ったら、さらに「本を選ぶ」をチャンクダウンします。そうすると、「上の学年の子に、以前選んで面白くてラクに書けた本がないか聞いてみる」とか「友達が前の年に書いたものを参考にさせてもらう」というように、「選ぶためにやること」が具体的になってきます。
ただ単に「読書感想文を書く」ということよりも、格段に取りかかりやすく感じませんか?
「自由研究」の場合も、「テーマの決定」「実験」「まとめる」などと分けられますが、テーマによっては「実験」と「まとめる」に時間と労力がかかるから、早めにテーマを決めよう、と考えることができます。そして「テーマの決定」をチャンクダウンすると、「自分が楽しめるテーマにする」とか「とりあえず友達5人に何を研究するか聞いてみる」などに分けられます。
このように塊を小さくしていくことで、「まず何をやったらいいか」が見えてくるわけです。どこから手を付けていいかわからず気が重いと感じる仕事があれば、この夏休みの宿題の例を参考にチャンクダウンしてみてください。
あいまいなものを明確にすると取りかかりやすい
「塊が大きい」場合と同じように、「あいまいである」ということも、仕事を取りかかりにくいものにする原因です。たとえば人事異動などで、初めての仕事に向き合わなければならないときにはどうしても不安を感じ、手を付けるのが遅くなってしまいます。原因は、その仕事の工程がどのようなものか、どの程度の時間が必要か、といった情報を持っていないために、不安を感じるからです。
先が見えない仕事をチャンクダウンするには、まず想像できる範囲で、工程を書き出します。想像できなければ、前任者や周囲の人から情報を収集して整理してみる。自分の頭の中だけであれこれ考えずに、とにかくすべて書き出して可視化するのです。それだけでも不安や怖さは軽減されていきます。
お化け屋敷が怖いのは、いつ、どんな方法で脅かされるが見えないからです。1回入ってわかってしまえば、怖さはほとんどなくなります。それと同じで、不確実性が減って見える部分が増えてくれば、不安感は解消されていくはずです。
以上のように、「大きな塊を小さく、あいまいなものを明確に」して、仕事や作業に取りかかりやすくする方法が、チャンクダウンなのです。