オラクルと言えば、世界トップシェアを握るデータベースソフトOracle Databaseをはじめとした優れた製品群で知られていますが、その卓越性は、顧客企業の事業変革、問題解決を支援するコンサルティング活動を抜きに語ることはできません。
『オラクル流コンサルティング』(以下、同書)は、いままであまり表に出なかったオラクルのコンサルタント向けの研修内容をまとめたもの。著者であるキム・ミラーは、オラクル米国本社でコンサルタントの育成プログラムの開発・運用に携わる現役ディレクターです。
育成プログラムに含まれるコンサルティング・スキル研修は彼女自身が開発したもので、同社の北米のコンサルタントとプロジェクトマネジャーは、全員この研修への参加が義務付けられています。
つまり同書は、「業界ナンバーワン」といわれるオラクルのコンサルタントが体得している技法を、研修プログラムの開発者自らが解説した稀有な一冊と言えます。
ここでは、同書で紹介、解説されているコンサルタントの技法(同書では「ベストプラクティス」と呼んでいます)の一端を紹介しましょう。
オラクルのコンサルタントが使う「エレベーターピッチ」
あなたは、顧客候補に対して、自分自身のことを30秒で説明できますか?
オラクルのコンサルタントたちはエレベーターピッチを重要視しています。エレベーターピッチとは、エレベーターで最上階まで上がる30秒ほどの間に、自分自身や自社の製品についてなど、聞き手が知りたがる情報を簡潔にまとめたセールストークのこと。この出来が、取引の成否を決めることも多いからです。
実際に使われるエレベーターピッチの例を見ていきます。
■自分を積極的に売り込む方法を身につける。それが事実なら、自慢話にはならない
まず紹介するのは、著者のキム・ミラーが実際に使っていたエレベーターピッチで、内容はクライアントへの自己紹介です。
「私はキム・ミラーと申します。人事給与システム課の上級主席コンサルタントで、アメリカ給与協会の認定も受けています。昔、勤務していた会社がJD Edwards(訳注:アメリカのコンピューターソフトウェア企業で、現在はオラクルの傘下に入っている)のコンサルタントにお世話になり、その仕事ぶりがあまりに見事だったので、影響されて自分もコンサルタントに転身しました。
現在はチームの一員やリーダーとして、さまざまなシステムの導入に取り組んでいます。企業の依頼を受けてプロジェクトに参加し、複雑なビジネス要件に応えたり、買収のお手伝いをしたりしています。
それで、本日はどのようなご相談ですか?」
(同書28ページより)
ポイントは、役職名と仕事内容、そして会社の業務内容が聞き手に伝わるように十分な内容を盛り込むことです。そして最後に用件を尋ねる言葉を入れるのを忘れないこと。相手が続けて話をしやすくなります。
製品を売り込む場合には、次のようにまとめます。