非エリート大学出身者が3分の2を占める

トップリーダーなら、いわゆるエリート大学出身者だろうというのが世間的イメージだ。しかしそれも少し違う。

“影響力を持つ存在になる道は、エリート大学(たとえばアイビーリーグの大学など)を卒業することだと考える人は多いが、私がインタビューしたリーダーの約3分の2はエリート校とはみなされていない大学に在籍していた。”
(64ページより)

しかし、トップ校ではない大学を卒業していても、その後大学院に進んだリーダーたちは、いくつかの名門校に集中していることも事実だ。これは、未来のリーダーになりうる学生は、たとえエリート大学でなくても目的と意欲を持って勉学に励み、何らかの専門知識を手に入れようと努力する存在だということをあらわしている。

幅広い知識を持つゼネラリスト型が多数

大学院レベルの高度な専門知識を身につけ博士号を手に入れたのなら、研究者としての道も正当な選択肢だが、その道を選んだのはたったの6分の1。多くは専門領域に精通しながらも、個人的な好奇心や挑戦意欲を武器に、専門家特有の狭い視点を超えるゼネラリスト的な能力を磨いていった。

こうした姿勢を本書では「リベラルアーツ的なアプローチ」と呼び、専門外の知識や技術を貪欲に求めるこうした態度が単なる研究者とリーダーを分かつ、としている。

人生の早い時期にメンター指導を受ける

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『世界を動かすリーダーは何を学び、どう考え、何をしてきたのか?』(日本実業出版社刊)

徹底した実力主義のアメリカでも、自分ひとりでできることは少ない。何かを成し遂げようとすればするほど社会的ネットワークが重要になる。

事実、著者たちが行なったインタビューへの回答にも、自分がつながるほかのエリート・リーダーたちの名前が頻繁に登場したそうだ。もっともそこには、会話の中に有名人の名前を持ち出して、自分が彼らとどれほど親しいかを大げさに自慢する、いわゆる「ネームドロッピング」もあったかもしれないが。

未来のトップリーダーたちがエリート・ネットワークにアクセスするときに欠かせないのは、「優れたメンターの存在」だ。メンターは、次世代のリーダーと期待される人物を良き道に導くだけでなく、彼と、すでに地位を確立したリーダーたちを結びつける機能も持つ。これを著者は「メンター関係の鎖」と呼ぶ。

このことを裏付けるように、著者たちがインタビューしたうち51%のリーダーたちが、自身を支援、援助してくれた特定のメンターの名前を挙げたそうだ。

GEやホーム・デポの取締役やニューヨーク大学の理事を務めたケネス・ランゴンの言葉を紹介しよう。このランゴンも劣等生だった大学一年生の時、経済学の教授に才能を見出されたことがきっかけで成功したと自覚している。

“自分の力だけで成功を収めた人間なんて存在しない。自分がそうだと言っている人間がいたとしても、私は信じないね。(中略)しっかり振り返れば、今いる場所にたどり着くプロセスのどこかで、誰かに背中を押してもらったり、肩をポンとたたいてもらったり、そんなことが絶対あったはずだ。”
(35ページより)

世界を動かすリーダーたちの多くは生まれや環境に特別に恵まれていたわけではなく、学ぶことへの意欲と貪欲な好奇心、優れた指導者の導きによってトップリーダーとなったのだった。

「リーダーはリーダーとして生まれるのではなく、リーダーになるのである」

このレポートが伝える大事なことのひとつだ。