4. 反応の悪い人をあえていじってみる
実際に話し始めると、能面のように無反応な人がいることがあります。せっかくテンションを上げて話しだしても、そんな人がいると不安になって、話のテンションも自然と下がってしまいますね。
そんな時は、聞き手をオブジェだと思い、いちいち反応を気にしないようにして話すことを、夏川さんはすすめています。
さらに上級者向けの手法として、芸人がよくやる「反応の悪い人をあえていじる」という方法も記されています。たとえば内容に同意を求めたり、質問に答えてもらうシーンがあれば、あえて無反応な人を指名するのです。
「かえって変な空気になっちゃうんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、意外ときちんと答えてくれるものです。それをきっかけに全体の盛り上がりを変えることもできます。といっても、大きな働きかけをする必要はありません。あくまですこしずつ、場の空気をかえるアプローチを行ないましょう。
「底」を置き去りにするのではなく、「底」から上げるのです。
鉄則は、場の温度が低いときほど、反応が薄い人から温めることです。(本書44ページより)
5. 目線の置き場は反応の良い人を順番に
大勢を前に話をするとき、どこに目線をおくべきでしょうか。
夏川さんによると、聞き手にマイナスの印象を与えない簡単で効果的な方法は、できるだけ“遠くを見ること”だそうです。また、「目線はZ型に動かして会場全体を見回せ」とよく言われますが、これはダメだとか。目線は会場全体を動いたほうがいいのですが、目線を動かすことやその形に神経が向いて、話すことが片手間になってしまっては本末転倒だからです。
目線は動かすのではなく、ハブとなる反応のよい人に順番に目をやって話していく。そうすることで会場全体を余裕を持って見回しながら話しているような印象を与えることができ、自らも話しやすくなります。
さらに、目線の動かし方に余裕が出てきたら、しっかりと相手の目を見て話すよう心がけましょう。「目は口ほどにものをいう」ではないですが、聞き手と目を合わせることで自分の思いを言葉にプラスして伝えるのです。
しっかりと目を見て話すだけで、人と人との間には不思議な引力が生まれるのです。
目を合わせる瞬間には、難しい顔ではなく、ニコッと余裕のある笑顔も忘れずに。
(本書、49ページより)
少し話し足りない部分があったり、失敗があったとしても、場を味方にして話すことができれば、「人前でうまく話す」という課題の半分は成功したようなもの! 夏川さんの著書では、さらに「ネタづくり」や「ハイパフォーマンスを発揮する」コツが解説されていきます。人前で話すことに苦手意識をもっている方にとっては、助けとなる1冊です。